高齢者に優しい平屋住宅|土地・間取り・設備・内装のポイントと事例を紹介
老後を見据えてマイホームの間取りを検討している方もいっしゃるでしょう。
そこで「高齢者まで安心して住める家を建てたい」とお考えの方のために、平屋建て住宅の土地選び・間取り・設備・内装デザインのポイントを紹介します。
蓮見工務店がこれまで手がけた平屋建て住宅の事例や、住宅を新築する際に利用できる減税制度・補助金も紹介しますので、これからマイホーム計画を始める方は、ぜひ最後までご覧ください。
● 家づくりを後悔したくない方は、平屋建て住宅の設計施工実績が豊富な建築会社へご相談ください。
● 「蓮見工務店 + 蓮見建築設計事務所」は、“手作りの家”をモットーに平屋建て住宅を数多く手がけています。
目次
【事例紹介】老後まで住み続けられる平屋|単身・夫婦生活の家
「蓮見工務店+蓮見建築設計事務所」は、これまで数多くの平屋建て住宅を手がけてきました。
その中から特長的な事例を抜粋してデザイン・間取りのポイントを紹介します。
アウトドアリビングを楽しめる平屋
家族構成 | 夫婦+祖母 |
こちらは、室内リビングの隣に広々としたウッドデッキのアウトドアリビングを設けた事例です。
アウトドアリビングは室内と緩やかにつながる屋外空間で、窓から見える景色が開放的になり、スロープを設けると車椅子などで室内へアクセスする際にも便利です。
老後はどうしても外出する機会が少なくなりがちですが、アウトドアリビングを作ると天気の良い日には外でお茶を楽しんだり読書したりと有意義な時間を楽しめます。
個室以外のスペースには間仕切壁を設けず、上半分がオープンな腰壁や格子によって空間を区切っています。
廊下の曲がり角を作らずに、杖や車椅子を使っても家の中を移動しやすくした点もポイントです。
〈おすすめコラム〉
【建築士解説】人気の“アウトドアリビング”は本当に快適なのか?後悔事例とその対策
開放的なリビングの平屋
家族構成 | 夫婦 |
建築面積 | 90.33㎡(約27坪) |
延床面積 | 90.33㎡(約27坪) |
こちらは、小上がりのある開放的なリビングを家の中心に配置した事例で、玄関からリビングに短距離でアクセスできます。
リビングを中心に家の中を回遊でき、リビングの一角には広めの土間を設けて庭へ出入りしやすくしたり、ランドリールームに勝手口を設置したりなど、シーンに合わせて出入り口を選べる点もポイントです。
キッチンは玄関土間からパントリーを通りアクセスできるため、買い物帰りに荷物を運ぶ動線も最短で済みます。
キッチンはオーダーメイドでシンプルに仕上げ、誰でも使いやすい作りにしました。
引き戸を徹底した平屋
家族構成 | 夫婦 |
建築面積 | 130.23㎡(約39坪) |
延床面積 | 130.23㎡(約39坪) |
こちらは昔ながらの日本家屋をイメージし、室内ドアのほとんどを引き戸に統一した事例です。
鴨居(※)の上をオープンにして、室内全体がまるで一つの空間のようなプランに仕上げました。
※鴨居(かもい):障子や襖、引き戸の上枠
間仕切り壁にしないことで高窓(ハイサイドライト)から差し込んだ陽の光を家の中心部まで取り込める点もポイントです。
キッチン・ダイニング・リビングには造作家具を設置し、空間をすっきり無駄なく活用しています。
造作家具は置き家具よりも掃除が楽で、怪我や事故が少ない点もメリットです。
〈おすすめコラム〉
“造作家具”のメリット・デメリットとは?設計事務所が考え方のポイントを詳しく解説
高齢者に優しい家の「土地選び」ポイント
高齢者に優しく老後まで暮らせる家を建てたい場合は、まず土地選びにこだわりましょう。
家族構成に合う広さ
平屋を建てる場合に気をつけなくてはいけないのが「建蔽率(けんぺいりつ)」です。
建蔽率(%)=(建築面積/土地の面積)×100
都市計画法によって定められている用途地域ごとに、建蔽率の上限が決められています。(例:第一種低層住居専用地域=30〜60%)
平屋建ては居住空間を全て1階に作るため、2階建てよりも建築面積は広くなるのが通常です。
そのため、家族構成に合う居住空間が狭苦しくならない家を建てるのに十分な土地が必要になります。
「家族が健やかに暮らすための居住面積はどのくらいなのか知りたい」という方は、国土交通省が公表している誘導居住面積水準を参考にしましょう。
仮にご夫婦2人ぐらしでゆったり暮らせる平屋を建てる場合、以下のプロセスで土地面積の目安を求められます。
一般型誘導居住面積水準(2人世帯) | 75㎡ (世帯人数×25㎡+25㎡) |
建蔽率(例) | 50% |
75㎡×0.5(50%)=150㎡
建蔽率50%のエリアで居住面積を75㎡確保するためには、最低でも150㎡の敷地が必要になるということです。
周辺環境
駅やバス停、病院、スーパーマーケットまでのアクセス経路についても確認しましょう。
距離が近くても坂道であったり階段を登り下りしなくてはいけなかったりすると、老後に自立した生活が難しくなる可能性があります。
少々郊外でも、ご家族の家からのアクセスが便利な場所を選ぶ方も少なくありません。
郊外は土地の価格が比較的リーズナブルなため、固定資産税・都市計画税など家を建てた後の固定費を抑えられて、ゆったりとした平屋を実現しやすい点がメリットです。
駐車スペースの確保
老後まで自家用車が必要かどうか検討しましょう。
「老後には車を運転しない」と考えている方は、駐車場よりも庭を広くした方がいいかもしれません。
ただし、来訪者の車両を一時的に停まれるスペースを確保しておくと安心です。
介護を前提とする場合は、玄関から駐車スペースまでのバリアフリー性も意識する必要があります。
趣味スペースの確保
老後に家の敷地内で趣味を楽しみたい方もいらっしゃいますよね。
家庭菜園を楽しみたい方は庭を広くする必要がありますし、アトリエやシアタールーム、書斎などが欲しい方も少なくないはずです。
理想的な老後の生活をイメージして、それを叶えるために必要な空間を間取りへ取り入れましょう。
高齢者に優しい家の「間取り」ポイント
老後まで快適に住み続けられる平屋を建てたい場合は、間取りの細部にまでこだわりましょう。
空間ごとに抑えるべきポイントが異なります。
玄関・アプローチ
道路から玄関までのアプローチと玄関ポーチ、室内玄関ホールまでの動線は、ご自身で出入りするシーンだけではなく、将来的に介護が必要になった場合も想定しておくと安心です。
- 玄関ポーチと室内玄関土間は広めにして、必要に応じてスロープを増設できるようにしておく
- 駐車場と玄関ポーチの間にはなるべく段差や傾斜はつけず、最短距離かつ直線的にアプローチできるようにする(車から下りて回り込まずに済む動線に)
- 玄関ドアの開口を広くする(車椅子に乗ることになっても出入りできる幅を確保しておく)
- 室内玄関土間にベンチを設置する(靴の脱ぎ履きや腰掛けたままのスライド移動が楽になる)
- 玄関ドア以外からも出入りできるルートを確保する(介護動線と家族動線を分ける)
水回り(キッチン・トイレ・洗面・浴室)
水回りの使い勝手は自立した生活に欠かせません。
しかし老後に行き来が大変では不便に感じてしまう可能性があります。
そのため、将来の生活ルーティーンまで想像することが重要です。
- トイレ・浴室と寝室の距離を近づけてコンパクトな動線にする
- 洗面・トイレ・浴室は介助者が動ける(車椅子が転回できる)ように広めのスペースを取る
- キッチンは玄関の近くに配置する(買い物から帰った時の負担を軽減)
- キッチンはアイランド式もしくはペニンシュラ式にして周回できるようにするか、壁付けタイプにしてダイレクトにアクセスできるようにする
寝室
「寝室は寝るだけの場所」と考えて余った場所に配置するケースもありますが、将来長い時間を過ごす場所になる可能性もあるため、細かい配慮が必要です。
- 明るい場所に配置する(ただし、日射熱に注意)
- ベッドの脇に車椅子がアクセスできるスペースを取れるようにする
- 介護者やご家族が一時的に寝泊まりできる部屋を用意しておく(主寝室やリビングから離してプライバシーを確保)
リビング
家にいることが長くなると、くつろぐ場所としてより一層重要なスペースになるのがリビングです。
- 玄関から近い場所に配置して自然とアクセスできるようにする
- 外へ出られる掃き出し窓を設ける(避難経路にも)
- 陽の光が奥まで届くように工夫する(高窓の採用など)
- ダイニング・キッチンへスムーズにアクセスできるようにする(直線的な動線が理想)
- 床に直接座ったり寝転んでくつろげる小上がり式の和室もおすすめ(腰掛けて上がり下りできるため便利)
廊下・ホール
廊下やホールはそれほど重要と思われないかもしれませんが、室内移動の利便性に影響します。
- 廊下幅は90cm以上確保する(車椅子や杖を使う人もスムーズに行き来できる幅)
- できるだけ曲がり角を作らない
- 曲がり角ができる場合は直径180cmの円が入るホールを設ける(車椅子が転回でき、人と行き交える)
- 廊下を作らずLDKを中心にそこから直接各室へアクセスできる間取りもおすすめ
(参考:国土交通省|第3章 基本寸法)
ドア
車椅子や杖を使う生活になると、ドアの開け閉めにおいて勝手が変わるため注意しましょう。
- ドアは引き戸にする(開きドアは車椅子や杖を使う人がご自身で開閉しづらい)
- 引き戸は開けたままにしておける配置にする(空調機器の台数を減らせて空間ごとの室温ムラをなくせる)
収納
せっかくゆったりとした平屋にしても、収納計画によっては日常生活が不便になるので注意しましょう。
- 物の収納場所を決める(荷物が増えにくい)
- 造作収納を取り入れる(動線の邪魔にならず、置き家具のような隙間がなくなって掃除が楽になる)
- ファミリークローゼットを設けて収納場所をできるだけまとめる
- パントリーを作る(食材や日用品を買い溜められる)
- 吊り戸棚を設けず低い位置に収納をまとめる(車椅子・杖を使っても出し入れできる)
外構
屋外のプラン(外構計画)は、老後の暮らしにあまり関係ないと思うかもしれませんが、家で過ごす時間が長くなる場合は庭などのプランもこだわりましょう。
- 外出しなくても自然を感じられる場所を作る(ウッドデッキ、縁側、中庭など)
- お手入れが大変になる植栽は避ける(剪定・落ち葉掃除・こまめな水やりが必要な植物を避ける)
そのため、間取りにこだわりたいポイントに優先順位をつけることが重要です。
「蓮見工務店 + 蓮見建築設計事務所」では、お客様のご要望と予算計画に寄り添った家づくりにこだわっています。
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高齢者に優しい家の「性能」ポイント
家づくりの際には特に「断熱性」へこだわりましょう。
室内が外気温の影響を受けず年間を通じて室温の変動がなく一定に保てれば、空調にかかる光熱費を削減できるだけではなく、ヒートショックなどの健康リスクも抑えられます。
最近は「高断熱+太陽光発電」を組み合わせたZEH(※)や、「高断熱+太陽熱利用」を兼ね備えたパッシブデザイン住宅も少なくありません。
※ZEH:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、高断熱性能と自然エネルギーの活用によってその家の消費エネルギー量を±ゼロにすることを目標とした住宅。(参考:資源エネルギー庁|知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~新しい省エネの家「ZEH」)
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高齢者に優しい家の「設備選び」ポイント
キッチン・洗面・トイレ・浴室などの水回り設備機器に加えて、照明や換気機器も生活の快適さに影響します。
- キッチン・洗面は座ったままでも使えるタイプがおすすめ(椅子や車椅子をカウンター下に入れられるタイプ)
- トイレはウォシュレット付きがおすすめ(手元のリモコンで操作できるものは使用後に振り返らなくて済む)
- 空調機器は、風が直接体に当たらない床下・小屋裏エアコンや床暖がおすすめ
- 浴槽は広くしすぎず、ベンチ付きがおすすめ(入浴時の事故を防ぐ)
- 浴槽は跨ぎやすいもの選ぶ(介護の負担も減る)
- 照明器具は明るさを調節でき、足元まで照らせる計画にする(加齢とともに必要照度は高くなり、夜間にトイレに立つことも増えるため)
- 窓や自然給排気口を開け閉めしなくても換気できる「第一種換気」にする(給気と排気どちらもファンによる機械換気にする)
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高齢者に優しい家の「内装」ポイント
どのような内装仕上げにするかによって、家庭での事故防止やお手入れの手間削減につながります。
- 滑りにくい床材を選ぶ
- キズがつきにくい床材を選ぶ(車椅子や杖を利用しても気にならない)
- 板張り壁や無垢フローリングがおすすめ(調湿性があり、吸光性・吸音性によって目と耳への負担を軽減できる)
- 調湿効果・消臭効果のある珪藻土仕上げの塗り壁がおすすめ
- 目に優しく飽きにくいナチュラルカラーを基調としたカラーコーディネートにする
- 段差部分は認識しやすいように周りと色を変える
- 後から手すりをつけられるように壁を下地補強しておく
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マイホーム新築で利用できる減税・補助金制度
最後に、マイホームを新築する際に利用できる減税(税特例)制度と補助金を紹介します。
それぞれ対象要件が異なりますので、事前に詳細をチェックしておきましょう。
減税制度
- 住宅ローン控除(新築の場合は省エネ基準適合住宅・ZEH水準省エネ住宅・長期優良住宅・低炭素住宅のみが対象。適用期限は令和6年12月31日だが、延長の予定あり)
- 住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置(父母や祖父母などの直系尊属から資金贈与を受ける場合のみ対象。適用期限は令和8年3月31日)
- 不動産取得税の特例措置(適用期限は令和9年3月31日)
- 登録免許税の軽減措置(適用期限は令和9年3月31日)
- 固定資産税の減額措置(適用期限は令和8年3月31日)
※適用期限は2024年11月時点のもの
補助金
- 子育てグリーン住宅支援事業
- 給湯省エネ2025事業
- ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業
- LCCM住宅整備推進事業
- 地産材利用関連補助金
- その他、都道府県・市区町村ごとの補助事業
2025年度の補助金情報に関する詳細はまだ公開されていないため、定期的に情報をチェックしましょう。
まとめ
「高齢者に優しい平屋住宅」「老後まで快適に暮らせる家」を建てたい方は、土地選びから間取り、住宅性能、設備、内装と様々な点にこだわりましょう。
将来、ご家族が車椅子や杖を使う生活を送ることを想定しておくと安心です。
家づくりを後悔したくない方は、平屋建て住宅の設計施工実績が豊富な建築会社へご相談ください。
そして、ずっと暮らし続けられる住まいを建てるために「構造・間取り・内装デザイン・材料」全てにこだわることも重要です。
デザインと性能、快適さの全てを持ち合わせた家を埼玉県で新築・リノベーションしたい方は、ぜひ「蓮見工務店」までお問合せください。