間取りの決め方で影響を受ける室内環境
快適な室内環境は、光や風の採り入れ方と家の中に出入りする熱や湿気の調整によって変わります。晴れた日の日中は照明を点けなくても日常的な作業が滞りなくできたり、風通しが良く爽やかな家にする為には、窓からの太陽の光と風を上手に採り入れることが必要です。
ただ、間取りと敷地の条件や敷地周辺の環境、窓の配置やサイズ、開閉方法がうまくかみ合っていないと、せっかく設置した窓から光や風を採り入れられなかったり、たとえ採り入れられたとしても、プライバシーや遮音の観点などで様々な暮らしの難しさが発生してしまうこともあります。
敷地の条件や敷地周辺の環境
隣家との距離が離れている、敷地周辺にはマンションや3階建て住宅がないというような環境であれば、太陽の光や風が近隣の環境によって妨げられる心配はありません。ただ、多くの住宅地においては、隣家との距離や周辺の建物の影響で、陽射しや風を採り入れる為の間取りの工夫が求められます。
例えば、太陽の光と風を採り入れる為に窓を多くする場合、窓の位置やサイズに配慮しないと、通りや隣家の窓からの視線および騒音などでプライバシーの確保ができない家になる心配があります。また、窓の数や面積を多くするだけでは十分に陽射しや風を採り込めないこともあります。
プライバシーを確保しつつ太陽の光を採り入れる為には、窓が面している方角の隣地や通りの状況に合わせて、高窓(ハイサイドライト)、地窓(ローサイドライト)、縦長のすべり出し窓、天窓(トップライト)などを、吹き抜けなどに設置する間取りの工夫や、型ガラスや格子と組み合わせるような窓廻りそのものの工夫が求められます。
風を十分に取り入れ、風通しの良い家にする為には、階段廻りや吹き抜け、スキップフロアなどへの設置で窓に高低差をつけるといった垂直方向の工夫と、2方向以上、出来れば対面する方向に開口部を確保して効率よく風を通すという平面的な工夫があります。間仕切には風を通す格子、ランマなどを採り入れるなどの開口部廻りの工夫も考えられえます。また、地域の風の傾向に合わせて、壁に沿って逃げていく風を取り入れる為に袖壁を設ける、縦辷り出し窓などのウインドキャッチを設置するなどの方法も有効です。
吹き抜けやスキップフロアは、一般的に耐震構造上は弱点となり易い要素になります。専門的な用語でいうと水平構面という、建物を水平方向で歪めようとする力に対抗する要素とって不利に働くのです。なので、陽射しや自然風を採り入れる、室内空気を効率よく循環させるために必要な規模を検討し、構造強度との調整をした上で、採用すべき間取りになります。
家の中に出入りする太陽の熱の調整
季節に応じて常に快適な室温を維持する為には、壁や床、天井、開口部に断熱性の高い材料を用い熱の出入りを抑えることが基本となります。ただ、それだけではなく、間取りや建物の設えによっても家の中に入って来る熱を調整する必要があります。具体的には陽射しによる太陽の熱エネルギーの取得や遮蔽といった調整です。
太陽の光や熱は家の中を明るくし、暖かくしてくれるので、たくさん家の中に採り入れたい要素である一方、夏は眩しさや室温上昇といった問題を起こします。間取りや窓の設えを決める際には、眩しい光が入る時間帯に作業がしにくくなる場所には、子ども部屋や書斎など集中力を必要とする作業をする部屋を配置しない、窓に可変ルーバーを設置するなど、眩しさ対策にも配慮する必要があります。
また、夏場の太陽の熱が室温を上昇させることに対しては、日射遮蔽対策をしなくてはなりません。暮らし方の工夫として簾、アウターシェードなど窓の外部での遮蔽が有効です。それが難しい場合はカーテンや内付けブラインドの開閉などの窓内部での対策が考えられます。建物計画の工夫としては、深い軒を設ける、袖壁を設けるなどで日射遮蔽をすることが大切です。
ただ、軒や袖壁で遮れるのは直達放射という、太陽の陽射しが直接当たることによる熱エネルギーの侵入です。夏場の窓からは直達放射以外に、隣家の壁や屋根、アスファルトからの照り返し、駐車している車からの反射など様々な熱エネルギーが入ってきます。
周囲の環境によりケースバイケースですが、太陽からの直達放射と同じくらいの熱エネルギーの侵入がある場合もみられます。方角や軒の深さ、袖壁の検討と共に外付けブラインドやルーバー雨戸などを納まりよく設える工夫、すだれやアウターシェードを取り付ける為の小庇やフック金具の設置などの工夫で、四季を通して快適さが維持されるよう、間取りとの連携が求められます。
参考サイト 一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会 開口部からの熱の出入りは、どの位あるのですか?
参考サイト YKKAP窓の教科書 暮らしを快適にする“断熱窓”
季節に応じた快適な室温や室内の明るさを調える事で、夏は涼しく冬は暖かい温熱環境、明るく衛生的な空間を生み、居心地の良い室内環境が提供されます。太陽の光と熱、風などの自然エネルギーを利用し、小さなエネルギー消費で快適な住環境を実現するパッシブデザインとは、具体的にどのような家づくりなのでしょうか?
間取りの決め方で変わる家族の暮らしやすさ
朝、起床してから出かけるまでの時間、帰宅して就寝するまでの時間を居心地よく過ごせる家、効率よく家事ができる家、物が溢れず自然に整理整頓ができる家にする為には、家族の動線にあった間取りが求められます。
朝、起床してから出かけるまでの時間
家族構成や家族の暮らし方によって変わりますが、ほぼ生活の時間帯が一緒である家族の場合、朝は洗面所とトイレが混みあいます。家づくり計画をしている段階では子どもが就学前や出産前であっても、数年すれば幼稚園や学校に通うようになります。
そうなると、両親の通勤時間と子どもたちの通学時間が重なる、さらに洗面所に洗濯機を置く場合には洗濯もしているという状況になるのではないでしょうか?そうなった時のことを見越して、洗面所の広さと脱衣所や浴室との並べ方、洗面台やトイレの数を決めていく必要があります。
家族が多かったり、共働きで効率的な家事動線が必須であったりする場合には、サブ洗面台や男子用の便器を設ける、洗面所と脱衣所は分離する、室内干し室(ランドリールーム)とファミリークローゼットを隣接して設けるなども視野に入れて間取りを決めていくと良いのではないでしょうか?また2階にトイレや洗面台を設けることも、故障や排水管の詰まりなどが起きた時、後々の改修工事の時などの安心につながります。
帰宅してから就寝するまでの時間
家にいるほとんどの時間帯は皆で一緒にリビングで過ごすというライフスタイルのご家族が増えています。その為、帰宅後は玄関からリビングに直行できる間取りが好まれる傾向にあります。この間取りの良さは、家族の自然なコミュニケーションが生まれやすく、家族の愛情が育まれるところにあります。子どもが帰宅後、黙って子供部屋に行ってしまったり、いつの間にか外出してしまったりというようなことが起こりにくい間取りでもあります。
ただその一方、帰宅した家族が外出時の荷物やコートをリビングに持ち込むため、リビングが常に散らかっている、物が溢れているという状態になりやすい間取りでもあります。そうなってしまうと、せっかく帰宅しても気持ちよく寛げないリビングになってしまうばかりか、突然の来客に慌てるというようなことになりかねません。
そこで考えたいことは家族の動線にあった収納スペースのある間取りにするということです。収納スペースに必要な基本的な条件は3つあります。しまいたい時にしまいやすい場所にある、しまいたい物のサイズにあっている、家族全員の持ち物の量に見合うサイズを備えている、この3点を基本に、どこにそんなタイプの収納スペースを設けるか計画を進めていく必要があります。
アウトドアスポーツが好き、ベビーカーも収納したいというようなご家族には、自転車やスポーツ用品も収納できる広い土間収納、共働きで食料品の買い出しは、週末にまとめてするというようなご家族には、駐車スペースからの動線に配慮された勝手口と、キッチンを繋ぐウォークスルータイプのパントリー、洗濯物にアイロンをかけたり、PC作業をしたりしたい場合には、ユーティリティコーナーとしても使えるリビング内の収納など、家族の暮らし方に最適なタイプを計画していきましょう。
「収納の数は十分あるのに家の中が片付かない」というケースもあれば、「収納の量が足りない」というケースもあります。家族に合った収納の数と収納量を備えた家にする為には、どのような収納計画を立てるべきなのでしょうか?
コラム 注文住宅の失敗しない収納計画
注文住宅の間取りの決め方のポイント
周辺の環境を考慮し、プライバシーを確保しながら十分な日当たりや風通しが得られる間取り、家の中を空気が循環し家の隅々まで冷暖房が行き渡る温度差がない環境、家族のだれもが寛ぎ居心地の良いリビングなどの共有スペースの設え、家の中が常に自然に片付いている様な使い勝手の良い収納スペースの計画、などが基本的な間取りのポイントです。
ただ、それだけを考えて間取りを決めてしまうと、完成した住宅に家具や家電を置いた時、デッドスペースが生まれてしまう、奥行きや幅がわずかに足りず、予定していた場所に置けない、家具が窓にかぶってしまうなどの問題が発生してしまう恐れがあります。
そこで家具や家電のサイズも考えながら間取り計画を進めることも大切なポイントです。家具や建具には、造作家具や造作建具にするという選択肢もあります。造作家具や造作建具は、デッドスペースが生まれない、内装との調和が良くインテリアに高級感や手造りによる温かみのような親近感が生まれるといった良さがありますが、間取り計画時に一緒に決めておく必要があります。
そして手造りであるがゆえに、そのデザインのセンスや作る職人の技術の良し悪しが、出来栄えに大きく影響します。過去の製作事例などを見せてもらい、そのセンスや技能がわざわざ作成依頼をするのに値するものかどうかを確認したほうがよいでしょう。またハウスメーカーやパワービルダー系の業者では、そもそもそれらの造作家具や造作建具の注文を受けないというケースもあります。
また、コンセントや照明スイッチの位置や種類は家族の生活動線と使用目的に合わせる、収納内部の棚は具体的に収納する物のサイズや量に合わせて奥行きや幅を決めるなども間取りの決め方のポイントです。
照明計画も家族の安らぎや寛ぎ感に大きな影響を及ぼします。必要以上に明るい照明計画は、落ち着かない印象を与えますし、暗すぎては落ち着いて読書をしたり、日記を書いたりなどの日々の暮らしに不都合となります。また、照明器具の位置や光の色、間接照明など光の当て方によって、空間の印象や感じる広さが変わってきます。小さな空間であっても照明の工夫で、十分な広さと寛ぎ感を得られることもあるのです。家族の暮らし方を具体的に想定して間取り計画と同時に照明の計画も進めていきましょう。
住宅は家族の暮らしの安全と安心、快適性をえる大切なものです。デザインに偏ることも、耐震強度や温熱性能だけに拘ることも、効率だけに特化することも、安らぎのある心地良い住まいのあり方とは異なってしまします。敷地の環境を読み取り、デザイン・性能・効率をバランスよくまとめた間取りや設えを計画し、何よりも家族みんなが寛げる住まいを実現することが重要です。
これらの要素に対するしっかりとした知識、家族の要望を読み取るヒヤリング力、そして全体を予算内でバランス良く実現する設計力と施工力をもった工務店との家づくりが、注文住宅における間取りの決め方を成功に導くカギとなるでしょう。
間取りを決めていく上で、窓は少なくするべきなのか、多くするべきなのか、窓が暮らしやすさに対して担う役割と共に考えていきましょう。
コラム 新築住宅には窓の少ない家が多い?窓と暮らしの関係
家が完成後、家具や家電を配置して、後悔する要因には、窓の位置と開閉方法と並んで、コンセントやスイッチの種類と位置も挙げられます。
コラム 戸建て住宅の新築時に意外に重要なコンセント種類と位置
家づくりの過程では、間取りが決まったタイミングで照明プランを作り始めることが大切です。照明プランは、室内環境と窓の位置、家族の動線、家具や家電の配置など、様々なことに配慮しながら進めてきた間取りプランの最終的な仕上げでもあります。
コラム 新築時の照明プランと照明器具選び
蓮見工務店の家づくりへの想い
私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの
手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、
そして設計事務所として培ってきた
デザイン性、高性能な家を提供させていただきます。
「熱を集め、移し、蓄える」
「風を通し、涼を採り、熱を排出する」
「直接的な日射を避ける」 「断熱・気密性を高める」
などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、
今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。
快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、
全てのバランスで実現できます。
そして、経験豊富な職人の手によってカタチになるのです。
私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、
お客様の一棟に全力をそそいでまいります。
注文住宅やリフォーム、リノベーション、店舗などの建築を
ご検討中の方には、これまでに携わったお宅をご見学していただけます。
「木造住宅の視覚的な心地よさ、
木にしか出せない香り、温かみのある手触り」
「木の心地よさと併せて太陽の光などを取り入れた、
パッシブデザインの良さ」
を感じて頂けます。
ご希望などございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。