平屋の屋根の種類別デザインと特徴
玄関のすぐそばまで来ると、屋根はそれほど視界に入りませんが、通りから見た時には、屋根のデザインが家の外観デザインから受ける印象に大きな影響を与えます。特に平屋の場合は、視界に入る屋根の割合が多いので、より外観の印象に関わってきます。屋根にはどのような種類があり、デザインはどのように違うのでしょうか?
モダンな外観デザインの平屋へのおすすめはシンプルな形の屋根
モダンな平屋では、外観にシンプルでおしゃれな印象を与える片流れ屋根、切り妻屋根、寄棟屋根、陸屋根が人気です。
片流れ屋根
片流れ屋根は一面だけの屋根が傾斜しているすっきりした印象の屋根です。同時に、屋根の傾斜を活かした小屋裏空間が、開放的なリビングを生み出し、ロフトを設けることもできます。太陽光発電を計画されている場合には、他の屋根より多くのパネルを搭載できるという良さもあります。傾斜角度と傾斜している面が向いている方向によって、より多くの太陽光を集められます。
その一方、屋根勾配の上手側の外壁は紫外線や風雨の影響を受けやすくなり、経年劣化の進行が早まる恐れがあります。また、小屋裏換気による湿気排出の為の開口が雨水浸入の危険性を高めますので、そのディテールを厳密に検討する必要があります。
切り妻屋根
切り妻屋根は三角の屋根です。赤毛のアンの原題にあるGreen Gables(緑の切り妻屋根)を記憶していらっしゃる方も多いのではないでしょうか?シンプルで多くの人に親しまれている屋根の形です。片流れ屋根に比べて、外壁を紫外線や風雨から守りやすく、室内への日射遮蔽も容易になります。切り妻屋根も小屋裏を活用してリビングを広く見せたり、収納スペースを確保したりできます。
また、最頂部の棟に小屋裏換気の排気口を設けることが出来るので、十分な排気・排湿面積と雨仕舞の安全性を両立するのに理想的な形状といえます。
寄棟屋根
寄棟屋根は4つの面がある屋根です。すべての方向に屋根があり軒を出せるので、切り妻屋根よりさらに、雨風や紫外線から外壁を守れ、日射遮蔽もしっかりとできます。その為、他の屋根に比べて夏の窓などからの日射熱による温度上昇を抑えられます。
一方で小屋裏換気を十分に機能させるのは厳しい形状と言え、小屋裏の温度上昇が断熱材を通して室内の環境にも影響すると共に、屋根の下地材である野地板面の結露の危険性にも配慮する必要があります。
陸屋根
陸屋根は傾斜のない平らな屋根です。箱形のシンプルな外観デザインを生み出します。屋上のある家にすることもできます。屋上は、アウトドアリビングとして使う、家庭菜園を作るなど、日常生活に楽しさを生み出します。ただその一方、屋根の役割である雨水を流すという役割を十分には果たせません。
その為、新築時には十分な防水工事をし、定期的な防水メンテナンスが必要です。片流れ屋根や切り妻屋根はシンプルである故に、全ての屋根の形の中で最も建築費を抑えられます。それに対して、陸屋根はシンプルでありながら、建築費が嵩む屋根でもあります。
和風な平屋におすすめの屋根の形
和風な平屋に使われる屋根の形には、主に切り妻屋根、寄棟屋根、越屋根、入り母屋屋根があります。
切り妻屋根と寄棟屋根
切り妻屋根と寄棟屋根は、どちらもモダンな住宅、洋風な住宅にも多く使われる屋根の形です。このコラムの冒頭にある平屋の画像は、切り妻屋根です。モダンな住宅や洋風な住宅では、様々な屋根材が使われますが、和風住宅の切り妻屋根は瓦葺きが好まれます。その為、同じ形状でも雰囲気が異なり、落ち着きのある外観デザインを演出します。
招き屋根(差し掛け屋根)
招き屋根は、長い面と短い面が組み合わされた三角の屋根が段違いになっている屋根です。モダンな住宅にも使われますが、瓦との相性が良いので、和風の平屋にも採用できる屋根の形の一つです。段差の部分に窓を設けられるので、平屋であっても十分な自然光が採り入れられます。また、小屋裏空間を広くできるので、空気が循環しやすく、屋根からの日射熱が屋外に排出しやすい形状とも言えます。
ただ、段になっている部分からの雨漏りのリスクや、片流れと同じで小屋裏換気口からの雨水浸入の危険性があるので、精緻な検討と確実な施工が求められます。
越屋根
屋根の上に採光や換気の為のもう一つ屋根が載っている屋根です。招き屋根の段差と同じように、立ち上がり部分に窓を設けることが出来ます。招き屋根と同じように、平屋であっても高い窓から風と陽射しを採り入れられる屋根です。ただ、複雑な形状なので、建築費が嵩みがちです。また、招き屋根と同じように、雨漏りのリスクがあるので、確実な施工が求められます。
入り母屋屋根
入り母屋屋根は、切妻屋根と寄棟屋根を組み合わせたような凝った造りの屋根です。妻と軒天を利用して招き屋根、越屋根よりもさらに小屋裏空間を大きくできるので、小屋裏の換気に有効です。また、住宅全体を屋根が守るので、どの屋根よりも外壁を守れる屋根です。現在では、純和風の高級な住宅に使われることの多い入り母屋屋根ですが、古くから残っている住宅もあります。
重要文化財 瓦葺きの入り母屋屋根の住宅 旧中筋家住宅
重要文化財 藁葺きの入り母屋屋根の住宅 牧村家住宅
■ 和風住宅での家づくりを計画する若いご家族の中には、洋風な家で育ち、和風住宅での暮らしを体験したことがない人もいらっしゃるのではないでしょうか?反対に、モダンな家を好む人の中には、実家の和風住宅が、寒くて暗かったので、洋風な家にしたいと考える人もいるでしょう。明るくて暖かい和風住宅にする為には、昔から続く日本の家の良さと、今の時代に、向上し続けている住宅性能という両方を備えた家づくり計画が必要です。
コラム 至高の暮らしを育む純和風住宅の平屋
屋根の高さと傾斜によって外観デザインや断熱効果、室内空間が変わる
平屋は2階がない分、屋根の高さに対する自由度があり、高さと傾斜角度によって、外観の印象も変わります。そして、屋根の役割である雨水を流すという働きも、傾斜が大きくなるほど効果が上がります。
片流れ屋根や切り妻屋根は、傾斜を大きくすると棟高も高くなり、小屋裏の空間が大きくなります。小屋裏の空間が拡がるほど、断熱効果が出しやすくなります。小屋裏は天井を作って収納や屋根裏部屋にすることも、天井を造らず、小屋裏の空間を1階の空間と繋げて、家の中の空間が拡げることもできます。一方、屋根をそれほど高くせず傾斜を緩くすると、強風時に家にかかる負担が減りますが、雨水を流す働きは、勾配の強い屋根に比べて低下します。
また、屋根を高くすると、高い位置に窓を設けられます。周囲を2階建て以上の建物に囲まれているような敷地では、平屋は日当たりと風通しを確保しにくいという問題点が生じてきます。しかし、天井を造らず、小屋裏の空間を1階の空間と繋げる間取りにし、高い位置に窓をつけることで、その問題を解決できる場合があります。高い窓からの陽射しは、1年を通してリビングを明るく、冬は暖かくします。また、1階の窓からの風は、小屋裏空間にある高い窓へと抜けていくので、室内の熱を排出する、風の通り道が拡がり換気の良い家になるという効果を生みます。
個性的な屋根にしたい、広い小屋裏空間を確保したいという想いだけで屋根の形状を決めずに、家を建てる地域の気候や、家全体の外観とのバランスに配慮して、屋根の勾配や形状、素材を含めたデザインを決めることが大切です。
参考資料 屋根形状の違いが小屋裏の自然換気量に及ぼす影響と夏期の排熱効果
■ 箱形で軒のない家が計画されることもありますが、軒のない家と軒のある家では、暮らしやすさと建物の耐用年数が変わります。また、同じ軒のある家でも軒の深さによって、軒から得られる効果が変わります。家づくりの計画中に、軒をつけるかつけないか、深い軒にするべきかという悩みを解決する為に、軒の良さと問題点について、確認していきましょう。
コラム 深い軒のある家に対する疑問を解決
蓮見工務店の家づくりへの想い
私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの
手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、
そして設計事務所として培ってきた
デザイン性、高性能な家を提供させていただきます。
「熱を集め、移し、蓄える」
「風を通し、涼を採り、熱を排出する」
「直接的な日射を避ける」 「断熱・気密性を高める」
などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、
今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。
快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、
全てのバランスで実現できます。
そして、経験豊富な職人の手によってカタチになるのです。
私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、
お客様の一棟に全力をそそいでまいります。
注文住宅やリフォーム、リノベーション、店舗などの建築を
ご検討中の方には、これまでに携わったお宅をご見学していただけます。
「木造住宅の視覚的な心地よさ、
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パッシブデザインの良さ」
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