軒のある家に対する疑問
軒は、外観デザインや室内環境にどのような影響を与えるのでしょうか?
和風の外観にしか調和しないのではないか?
近年、軒のない箱型の住宅が増えているため、軒のある家=純和風な家とイメージする人もいらっしゃいますが、軒のある家は日本以外の国にもあります。アルプスの少女ハイジが住んでいた家や、白雪姫の挿絵にある小人の家も、深い軒がある家だった気がします。
軒とは屋根のうち、家の外壁よりも外に張り出している部分を指します。出っ張っている部分が長い軒を、軒が深いといいます。このような屋根の家は、和風な住宅にはもちろん調和しますが、モダンなデザイン、洋風なデザインの家にも調和します。
ただし、外観の形状によっては、軒がない方がすっきりしたデザインになる場合もあります。軒のある家にしたい場合には、深い軒を設けることを前提に、外観デザインのプランを進めることが大切です。
深い軒は、外観に陰影をつくり、奥行き感や立体感を生みだします。玄関先や窓辺、ウッドデッキに立つと、屋根は見えませんが、軒天は視界に入ります。その軒天に無垢材を使うと、軒下が落ち着きのある高級感に満ちた空間になり、居心地の良い空間を味わえます。
室内が暗くなるのではないか?
軒は日射を遮蔽するのだから、陽射しが入らなくなり、室内が暗くなるのでは?と心配もあります。軒は、季節によって変わる太陽の高さと、屋根が向いている方角を考慮し、夏は直達日射を遮り、冬は家の奥まで陽射しが届くように計画されます。陽の光は直接届くものもあれば、色々なものに反射して届く、間接光もあります。その為、深い軒があるからといって、晴れた日の昼間でも照明をつけなくては日常的な作業ができないというようなことにはなりません。
ただ、一概に、深い軒があっても大丈夫とは言い切れえません。敷地周辺の環境や、隣家との距離などによって、軒を深くすると室内が暗くなるケースもあります。そのような場合には、ハイサイドライトや吹き抜けを設け、それでも難しい場合は、トップライトを設えて陽射しを採り入れる工夫をする必要が出てきます。
深い軒が生み出す効果
深い軒は、外観に奥行き感や立体感を与えるだけではなく、住宅の寿命を延ばすという効果があります。
日射を遮蔽する
冬は暖かさを届けてくれる陽射しですが、夏は室温を上昇させます。断熱性や気密性が高い住宅であっても、日射遮蔽ができていないと、冷房負荷が増大します。また、紫外線の侵入によって、クロスや畳、家具が褪色してしまいます。室内にいる家族も日焼けをしたり、眩しさによって、集中力が低下したり、目が疲れたりします。深い軒は、日射の侵入を遮って、冷房の効きを良くし、紫外線による劣化を軽減します。
住宅の寿命を延ばす
軒には、雨や紫外線から、外壁や窓を守る役割もあります。特に、雨水の浸入は木造の住宅を劣化させる大きな原因です。紫外線によってシーリングや塗装が劣化すると、ヒビが発生し、その部分から雨水が浸入し、やがて構造部にまで及んでしまうことがあります。もしそうなってしまえば、高い耐震性を備えた住宅であっても、地震の際に被害を受けるリスクが高まります。吹き降りの雨が強いと、換気口から雨水が浸入することもあります。
軒によって、雨風や紫外線から守られている外壁は、健康な状態を長年に渡って維持できます。現在の木造住宅ではほどんどの場合、外壁と構造体の間に水蒸気や熱を排出するための通気層が設けられています。通気層を通って上昇した水蒸気や熱気は軒下や屋根の棟から排出されるのですが、軒の出が十分で無かったり、棟からの排出が不可能なデザインの場合、通気層の出口から逆に雨水が浸入したり、上手く水蒸気などを排出することが出来ないで、壁体内結露を起こし、建物の寿命を縮めてしまうといった事例が増えています。目に見えない部分でも、建物の耐久性に、軒の深さは影響しているのです。
加えて、玄関ドアや窓ガラス、網戸も、軒のない家に比べて汚れにくくなる良さがあり、エアコンの室外機なども、軒下にあると、冷暖房の効率が向上します。軒下にあるウッドデッキには、雨水や紫外線による経年劣化が抑えられるという良さもあります。
軒下空間を楽しめる
軒下にあるウッドデッキは、雨の日でも子供を遊ばせたり、洗濯物を干せたりする便利さがありますが、それだけではありません。夏の夕方には、夕涼みを楽しんだり、秋の夜には、月を眺めたりして、ゆったりと過ごせる空間が生まれます。梅雨の季節も、軒があると、雨が遠くに感じられるので、鬱陶しさが少なくなり、庭のアジサイの眺めを楽しめたりします。柱を建てて、深い軒にすると、アウトドアリビングとしても使えます。
軒のある家を計画する際に注意しなくてはならないこと
軒のある家には、良い面がたくさんありますが、注意しなくてはならない点もあります。
床面積に影響する
軒の出が、1メートル以上あると、その分は建築面積に算入されます。加えて、少なくとも軒の出の分は敷地境界線から内側に壁面位置を設定しなければなりません。低層住居専用地域では北側斜線制限という規定が建築基準法にあり、北側隣地側の軒先高さに影響してきます。
これらのことが、密集した住宅地では、軒のない家、軒の出が浅い家の多い理由でもあります。敷地面積と、家族に必要な居住面積を考えあわせた上で、建物の方位や周辺環境を考慮し、軒の深さを決めることが大切です。
建築費が嵩む
軒のない若しくは軒の出の浅い家と、軒の出の深い家を比べると、軒の出の深い家の方が建築費が嵩みます。軒が深くなるほど、単純に屋根面積がふえるので、使用する建材の量が増え、補強の為の梁や、柱が必要になり、合わせて施工費もふえ建築費が上がります。
ちなみにこれは、建築時にかかる費用(イニシャルコスト)についての比較です。
次に長い目で見た時の費用(ランニングコスト)の差を考えてみましょう。外壁の建材、塗料のグレードにもよりますが、十数年~二十年に一度は、メンテナンスをする必要があるといわれています。ただ、軒のある家とない家、軒の深い家と浅い家では、メンテナンスの周期が変わってきます。
高耐候の建材と塗料を使い、軒の出を深くするという方法をとれば、メンテナンスの周期は長くなり、ランニングコストが抑えられます。家を建てて、1回目のメンテナンスが来る時期が、子供の大学入学などで費用がかかる時期と重なりそうだから、新築時にがんばってメンテナンスの周期が長い方法を選ぶという考え方もあります。逆に、新築時のイニシャルコストを他の部分に回したいから、軒の出を深くしないでおこうという選択もあります。
また、軒の出によって上手に日射熱や光のコントロールが出来れば、冷暖房や照明にかかる光熱費を削減することが可能です。敷地条件や建物の規模などによって一概には言えませんが、年間数万~10万円程度の光熱費が節約可能と言われています。とすれば、10年~20年で元がとれる事にもなります。
軒の深さは、家が完成してからリフォームでは変えられません。高額なリフォーム費用をかければ、できるかもしれませんが、現実的ではありません。他の部分との建築費の配分も考えた上で、慎重に決めることが大切です。
予算との関係もありますが、深い軒のある家は、外観デザインにも、暮らしやすさにも、住宅の寿命にも良い影響を与えます。家づくりプランでは、深い軒について検討することはとても良いことです。
蓮見工務店の家づくりへの想い
私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの
手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、
そして設計事務所として培ってきた
デザイン性、高性能な家を提供させていただきます。
「熱を集め、移し、蓄える」
「風を通し、涼を採り、熱を排出する」
「直接的な日射を避ける」 「断熱・気密性を高める」
などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、
今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。
快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、
全てのバランスで実現できます。
そして、経験豊富な職人の手によってカタチになるのです。
私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、
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