一方、破風とはケラバと呼ばれる雨樋がついていない側の屋根の側面についている部分を指します。この部分には破風板が取り付けられていて、屋根材と軒裏の仕上材との間を塞ぐ部材で、屋根が強風の際に飛んでしまうことや屋根から雨水が侵入して雨漏りをしたりすることを防いでいます。
格式のある和風住宅では、この破風板や破風板の上部に装飾が施されることもありますが、一般的な住宅ではシンプルな破風板が採用されることがほとんどです。
軒の働きが室内に与える影響
軒には、室内に侵入する太陽の熱と光の量を調整する役目があります。その役目を果たす為、軒は季節によって変わる太陽の高さと、屋根が向いている方角を考慮し、夏は直射日射を遮り、冬は家の奥まで陽射しが届くように計画されます。
適切に軒の出幅を計画すれば、夏場の日射を効果的に遮蔽しながら、冬には暖かい陽射しを家の中に取り入れる事も可能になります。また、直接届く光以外に、庭や縁側で反射した光を軒裏で再度反射させ、間接光として柔らかな光を家の中に採り入れられるので、程よい明るさの室内環境を調えることも出来ます。それでは日射を遮蔽することが室内の環境にどのような影響を与えるのでしょうか?
室温上昇を抑える
軒が室内環境に与える最も大きな影響は、夏の室温上昇を抑えることです。夏は太陽の熱の侵入によって室温が上昇し、冷房の効率が低下してしまいます。せっかく断熱性と気密性を高めて、熱の出入りを抑えた住宅であっても、窓からの日射は夏の室温に大きく影響してしまいます。日射を遮蔽することで室温上昇を抑え、冷房の効率を良くするので、結果的に省エネ効果にも貢献します。
眩しさを防ぐ
時間帯によって、窓からの太陽の陽射しは室内を眩しくさせます。せっかく明るい陽射しが届いていても、眩しさを伴ってしまうと、集中力が低下する、PCやテレビの画面が見にくい、目が疲れるなどの状況になってしまいます。
家具や内装の褪色、家族の日焼けを防ぐ
太陽の陽射しに含まれている紫外線には、家具や内装を褪色させるという問題もあります。使用する材料によっては陽射しの影響を殆ど受けないものもありますが、多くの住宅用資材では褪色や劣化、変形などの影響を少なからず受けてしまいます。
加えて、紫外線は室内にいる家族までも日焼けさせます。外出する際には日傘や帽子で、紫外線に対しての対策をされていらっしゃることと思いますが、家の中では無防備です。しかし、紫外線は窓ガラスを通して家の中に侵入してきて、皮膚に負担をかけます。軒と並行して、紫外線をカットするガラスの窓を採用すると、より紫外線対策に効果的です。
参考サイト 国土交通省 気象庁 紫外線の性質
軒が住宅の耐久性に与える影響
軒には雨や紫外線から外壁や窓を守り、住宅の寿命を延ばすという役目もあります。室内環境への影響とは違い、直接見たり、体感したりすることはできませんが、建物の耐久性に軒の深さは大きく影響しています。
紫外線による外壁への負担を抑える
外壁に直接太陽の光が当たる量が多いほど、紫外線によって外壁の塗装やシーリングが劣化する速度が上がってしまいます。
外壁の塗装やシーリングの劣化が進むと、ヒビができ、ヒビからは雨水が侵入します。雨水が侵入していることに気づかないまま年数がたってしまうと、外壁の内部から構造部にまで水分が浸透し、腐蝕してしまう恐れがあります。
通気層の出口への雨水の侵入を抑える
ほどんどの木造住宅には、外壁と構造体の間に水蒸気や熱を排出するための通気層が設けられています。この通気層によって、上昇した水蒸気や熱気は軒下や屋根の棟から排出されるようになっています。
しかし、軒の出が十分ではなかったり、棟の出がゼロなどのデザインであったりした場合、通気層の出口から逆に雨水が浸入してしまうリスクが高まります。その結果、壁体内の水蒸気量が想定以上に上昇し躯体を傷めてしまうといったデメリットも起きてしまいます。
軒下にある建具やウッドデッキが守られる
玄関ドアや窓ガラス、網戸、ウッドデッキは、常に雨風紫外線にさらされているので、汚れや傷みを受けやすい場所です。特に日当たりの良い場所では劣化の進行が速いのですが、軒により雨水や紫外線から守られると、その劣化の進行を遅くすることが出来ます。
室外機が守られる
軒下に置かれたエアコンの室外機は汚れにくくなると同時に、日射からの影響が少なからず減少するので、冷房の効率が向上します。
屋根には家を風雨や紫外線から守ると同時に、軒の出による日射遮蔽機能や断熱機能によって室温の調整をするという役割もあります。
軒下空間が生み出す暮らしへの影響
軒下空間には、暮らしに楽しさや便利さを生み出します。夏は軒下の縁側に腰掛けて、スイカを食べたり、夕涼みをしたり、庭で花火をする子供たちを見守ったりする和やかな時間が生まれます。秋には庭の紅葉やお月見、春にはガーデニングの合間の休憩ができます。
また、柱を建てて軒を深くしウッドデッキを設けると、アウトドアリビングを楽しめると同時に、雨の日に子どもを遊ばせたり、洗濯物を干したりなど実用的な効果も得られます。
家づくりの計画中には、リビングと庭を繋ぐ空間を計画されることもあると思います。その際に、ウッドデッキをはじめ、濡れ縁、広縁、土間など、さまざまな選択肢についても、考えてみませんか?
軒が住宅プランに与える影響
軒の有無や深さは、住宅の床面積や建築予算、暮らし始めてからの省エネ性に影響があります。
床面積が削られることがある
同じ敷地面積に建てる家であっても、軒のない家と、1m以上の深い軒のある家では、建築面積が変わります。建築基準法では、軒先より1m以上内側にある部分は建築面積に参入すると定められています。その為、1m以上の深い軒のある家を計画する場合、その地域で定められている建ぺい率の制限内で建てる為には、その分の延床面積が削られることになってしまいます。
隣家との距離が離れている、敷地面積の余裕があるという状況であれば、軒が住宅の床面積に影響することはありませんが、密集した住宅地では、影響が大きくなることがあります。敷地面積と、家族に必要な居住面積を考えあわせた上で、建物の方位や周辺環境を考慮し、軒の深さを決めることが大切です。
建築予算と暮らし始めてからの省エネ性
軒を設けるということは屋根を大きくするということです。軒が深くなればなるほど屋根は大きくなっていきます。屋根が大きくなればなるほど、必要な建材の量が増えると共に、柱や梁で補強しなくてはならない為、建築費は嵩んでいきます。
一方、暮らし始めてからのランニングコストは、軒の働きによって抑えられます。
冷暖房にかかる費用を抑えられる
深い軒は室温上昇を抑えると共に、室外機を守ってエアコンの効率を上昇させます。その結果、軒のない家に比べて少ないエネルギーで季節に応じた最適な室温を維持できる為、冷暖房にかかる費用を抑えられます。
参考サイト 経済産業省 資源エネルギー庁 住宅による省エネ
太陽の光や熱、風などの「自然の恵みを活かして調える」という考え方に基づく設計の手法がパッシブデザインです。軒も自然の恵みとの賢い付き合い方に貢献しています。
外壁塗装の周期が長くなる
軒によって雨風紫外線による劣化の進行が抑えられるので、外壁塗装の周期が長くなります。
暮らし始めてから、軒があれば良かった…と思っても新たに軒を設けたり、軒の出を深くしたりすることはできません。もしそれをするなら、相当な費用が掛かるでしょう。敷地面積、周辺の環境、予算、家族が暮らしに望むことなどすべてを考え併せた上で、軒のある家にするのか、その場合にはどの程度の深さにするのかということを慎重にきめていくことが大切です。
その際には、施工を依頼する建築会社に、疑問に思うことはすべて質問し、納得のいく答えを見つけながら家づくりプランを進めていきましょう。
蓮見工務店の家づくりへの想い
私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの
手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、
そして設計事務所として培ってきた
デザイン性、高性能な家を提供させていただきます。
「熱を集め、移し、蓄える」
「風を通し、涼を採り、熱を排出する」
「直接的な日射を避ける」 「断熱・気密性を高める」
などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、
今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。
快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、
全てのバランスで実現できます。
そして、経験豊富な職人の手によってカタチになるのです。
私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、
お客様の一棟に全力をそそいでまいります。
注文住宅やリフォーム、リノベーション、店舗などの建築を
ご検討中の方には、これまでに携わったお宅をご見学していただけます。
「木造住宅の視覚的な心地よさ、
木にしか出せない香り、温かみのある手触り」
「木の心地よさと併せて太陽の光などを取り入れた、
パッシブデザインの良さ」
を感じて頂けます。
ご希望などございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。