目次
世界的に見たウッドショックが発生した原因
日本でウッドショックが深刻化している原因には、世界からの影響もあります。
原因① アメリカや欧州で木材の需要が増えている
アメリカではコロナが発生から昨年末まで、住宅ローンの長期固定金利において、直近10年間での最低金利レベルである1~2%台で推移していたため住宅業界は活況が続いていました。また、コロナによるテレワークの普及によって家で過ごす時間が増え、家賃の高い都心の賃貸から治安の良い郊外に家を求める人が増えたことも活況の要因として挙げられます。その結果、リフォーム需要も高まり、ホームセンターから木材が消えてしまったとういう極端な状況も起きました。
また欧州においても、公共建築をはじめ多くの建物を木造で建設しようという大きな流れが出来ています。欧州での内需が高まりは、アメリカや中国、日本への輸出量の減少に繋がっています。この流れは今後も続くもので、日本の欧州からの輸入木材の先行きは厳しいものがありそうです。日本におけるウッドショックの本質は、この欧州材(レッドウッド・ホワイトウッド集成材)の輸入の滞りが主因だとの見方がありますが、大手ビルダーやハウスメーカーの主力材料がこれらの欧州材であることからも、その意見が的を得ている様に思います。
北米産木材に関しても、前述のアメリカ国内の需要の急拡大のほかに、カナダ木材の一大産地であるブリティッシュコロンビア州を襲った、山火事や豪雨・洪水などの災害が大きな影響を及ぼしました。災害により生産が滞ったばかりでなく、輸送の為の鉄道や道路にも大きな爪痕を残したため、長く支障をきたすことになりました。
北米産木材のシカゴ市場での先物価格は、昨年初ではここ10数年の平均的な価格であった$500/ボードフィートが、昨年7月物で$1600/bfという3倍以上の最高値を付けたのち、昨秋から昨年末にかけては$600~$800/bfと落ち着きを見せていました。今年に入るとウクライナ侵攻の影響もあり、現在は$1000~$1200/bfという水準です。ウッドショック前に比べ、現在でも約2倍の価格で取引されているということになります。
原因② コンテナ不足
コロナ以前から米中貿易摩擦の緊張が高まっていた為に、コンテナの生産量が抑えられていたことに加え、コロナの影響でコンテナの生産量が低下した為、物理的にコンテナが不足しています。さらに、コロナの影響で港湾作業員やドライバーの不足などの人的な理由から、コンテナの効率的なオペレーションが機能せず、コンテナの足りない場所、余ってしまっている場所などがいたるところに発生し、沖待ちしているコンテナ船も少なくないという状態を起こしました。
日本は陸路で海外からの輸入品を運ぶことはできません。かといって建築用木材を空輸すれば、だれも購入できないような価格になってしまうでしょう。海路で運ぶ方法しかない日本にとって、コンテナ不足は深刻な問題です。さらに、コンテナ不足がなかったとしても石油を含め、運河で事故が起これば、日本への輸入量はさらに減ってしまうことになります。
原因③ 中国の丸太需要拡大
中国は他の国に先駆けて経済を回復しました。その為、以前からどの国よりも大量の産業用丸太を輸入していた中国が、コンテナを買い集めているということもコンテナ不足に拍車をかけていると言われています。
原因④ ロシアの木材輸出禁止措置
ロシアがウクライナへの侵攻を続けています。このことに対する日本政府の方針に対して、ロシアは日本を非友好国とし、ロシアからの木材輸出禁止措置をとっています。もともと日本におけるロシア産の製材の割合は14%程度といわれており、危機的な状況を招く程の影響はないでしょう。ただし、日本の輸入木材の多くの割合を占める欧州では、針葉樹の輸入の75%をロシア、ベラルーシ、ウクライナが占める状況です。それらが滞る状況となれば、欧州から日本に輸出される木材の量も制限されてしまうことが容易に想像できます。
ロシア産材は、中国などを経由して少なからず輸入されることになるかと思いますが、その木材を使用することに対して、道義的に敬遠する工務店も出てくるでしょうし、建て主側としても難しい選択になりそうです。
♦ 住宅の建築には費用がかかります。国の補助金を活用して家づくりに役立てましょう。
日本の問題によるウッドショックが発生した原因
ウッドショックとは、木材が不足し、価格が高騰したり入手が困難になる状況を表す言葉です。そして実は過去にもウッドショックは起こっています。その度に提起されてきた問題が解決されていなかったということが、今回の日本でのウッドショックの原因の一つです。これほど森林が多く、木材を自己調達できる日本において、国産材の利用計画が十分な結果を出せなかったことにあります。
原因① 輸入木材に頼って住宅を建築してきた
山と水源の多い日本は木材が豊富な国であった為、木造住宅が庶民の住宅として親しまれてきました。戦後の復興の為に木材が不足し造林が進められ、また日常の燃料が薪や木炭から石油やガスに替わるようになった為に雑木林は、杉やヒノキに植え替えられました。
そのような状況の中、輸入木材の自由化によって、安価で質・量的にも安定した外国産材が大量に導入され、そのあおりを受けた日本の林業は衰退してしまい、放置され荒廃する森林増えてしまったのです。もともと国産材の産地は急峻な山岳地帯が多く、木材の切り出しや効率的な運搬には不向きであることも価格に影響し、低価格な輸入木材との価格の差がさらに大きくなってしまっています。
2002年以降は、林野庁や各自治体が国産の木材を守る為の取り組みを進めていますが、現実には輸入木材の需要が大半を占めています。価格差があまりにも大きかったこと、揃えられる材種やサイズが制限されること、無垢材を扱える大工が減っていることなどがその理由です。また、国産材の需要が増えているとは言え、国産材をすべて住宅建材として使っている訳ではありません。バイオマス資源や木材パルプなどにも使われているからです。
参考サイト 経済産業省 資源エネルギー庁 再生可能エネルギーとは
国産材の需要を増やすという取り組みと同時に、増えた需要に応えられるだけのインフラ整備が必要です。急峻で複雑な地形から効率よく木材を運搬するための林道の整備、切り出された木材を建築材として加工する製材所の増設、そして何より林業や製材業を担う人材の確保が重要になります。
国産材による木材産業が、今後も起こりうるウッドショックから日本を守る力を持つ為には、安定した需要の確保と、需要に見合うインフラ整備という両輪がバランスよく実を結ばなければなりません。
今回のウッドショックを機に、国際情勢に左右されない安定した木材の供給には何が大切なのか?、今後も予測される燃料費の高騰による輸入運搬費の負担増、日本経済の低迷による円安の更なる進行での輸入コストの増大なども含めて、国産材の利用拡大のメリットに目を向けるべき時期だということは確かでしょう。
先進的な工務店では、既に脱輸入木材、脱合板に向けて、国産材の産地との連携や商流の開拓、そして新たな工法の研究などについても実践をはじめています。
参考資料 第46号(2012.10発行) 特集:日本人が森に学ぶこと。
参考サイト 林野庁 森林・林業・木材産業の現状と課題
原因② 国産材の価格も上昇
輸入木材の搬入が滞った影響で、国産材の需要が急増し、国産材の価格も上昇しています。ウッドショック前の昨年初において、国産杉柱の㎥単価は5万円ほどでした。それがウッドショックによる輸入木材(主に欧州材のホワイトウッド、レッドウッド)の暴騰につられ、昨年8月には2.4倍の12万円/㎥という最高値を付けました。その後、微減したものの、6月のデータで11万円/㎥と、ほぼ高止まりの状況が半年ほど続いています。
原因③ 日本の買い控えと買い負け
2020年にウッドショックが発生した際、過去の経験から長く続くことはないと判断し、日本が買い控えをしたことから、その分が他国に販売されてしまったという経緯があります。また、日本の購買力そのものが国際的に低下しており、欧州材の売買において、中国やアメリカに買い負けしている状況です。その結果、木材が不足し、価格高騰に拍車をかけるという状態になっています。
参考資料 林野庁 ⽊材需給動向について
♦ 木造の家、在来工法の家が選ばれるわけを考えてみましょう。
ウッドショックの2022年からの見通し
建築用木材価格はウッドショック前の昨年初と比較すると、輸入木材の主力であるレッドウッドの集成管柱や集成平角材の価格が約3倍も増加しています。昨年末あたりにピークを迎え、その後も高止まりが半年ほど続いている状況は国産材の値動きとほぼ同様です。
構造用合板の価格は、ウッドショック以降現在に至るまで、ほぼ右肩上がりで上昇し、この1年数ヶ月で、ほぼ2倍になっています。合板の製造に欠かせない接着剤の主成分である尿酸の輸入問題や、大手合板製造会社の工場火災の影響も大きく、また合板の表面に使われる高強度のラーチ材がロシア産であることからも、今後も構造用合板の仕入れの困難さや価格の高騰が危惧されます。
今迄、建売住宅やローコストビルダー、ハウスメーカーが主力で使っていた、欧州のレッドウッドやホワイトウッドの集成材は、短期的にはウクライナ侵攻の影響、長期的には欧州の建築材料の木材化という流れの影響で日本への輸出量が減少しており、「欧州材時代の終焉」の始まりと言われています。
また、為替レートや輸送コストの負担増からも、もはや輸入材の価格は国産材に比して決して安いものでもなくなって来ています。
参考サイト 経済産業省 どうなったウッドショック;価格の高止まりが需要を抑制?
この状況下において、大きな影響を受ける可能性がある新築住宅は、ローコスト住宅など、集成材で作成された規格建材を多く使う住宅ではないかと考えられます。規格建材には、熟練した大工の腕がなくても扱いやすい、建材の均等な強度を基に設計耐震ができる、安価であるという良さがありました。ところが、安価ではなくなってしまった上に、国産材を使う場合には、今までの規格や、現場の施工者に対しての見直しが必要になってしまうからです。
地場工務店での注文住宅も、国産材が高騰しているので今までのような建築費では建てられなくなっているという現実はハウスメーカーやローコストビルダーと同じです。今年の4月20日に放映されたのTBS 「THE TIME」で、今まで3000万円で建てられた住宅が現在では3800万円と、建築費が26%もアップしている状況だと伝えました。地域によって多少の違いはあるものの、似たような状況はどこでも起きていると思います。
ただ、工務店の多くは、国産材の扱いに熟練した大工を抱えている、集成材や構造用合板のみの強度に頼らずとも確実な耐震性を持たせる設計力や施工ノウハウがあるといった強みを持っています。また、国産材の供給者側も、これまで国産材の弱点とされていた大寸の平角材の供給や、内部割れ・表面割れに対する乾燥技術の向上など、さまざまな工夫が提案されつつあります。
これからの家づくりは、リスクやCO2排出量が少なく、工夫によっては地域産業の発展にも貢献する、「国産材で家を建てる」という方向で考える時期に来ているのではないでしょうか?
♦ 注文住宅とは、一戸建ての住宅を建てる方法の一つです。戸建て住宅を建てるなら注文住宅でという希望を持つご家族は多くいらっしゃいます。ただ一口に注文住宅と言っても、実はいろいろなタイプがあることをご存知でしょうか?注文住宅のタイプによる違いや、本来の注文住宅で家を建てる意味についてわかりやすくお話していきたいと思います。
蓮見工務店の家づくりへの想い
私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの
手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、
そして設計事務所として培ってきた
デザイン性、高性能な家を提供させていただきます。
「熱を集め、移し、蓄える」
「風を通し、涼を採り、熱を排出する」
「直接的な日射を避ける」 「断熱・気密性を高める」
などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、
今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。
快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、
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私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、
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注文住宅やリフォーム、リノベーション、店舗などの建築を
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