太陽光発電は“発電効率”が重要。上げるポイントや注意点について

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先日、東京都で建築事業者に対して太陽光発電設備の設置義務量を設定する法案が通りました。

それをきっかけに、今より一層、戸建住宅への太陽光発電システム導入が注目されています。

しかし、そこで大半の方が気になるのは「果たして初期コストを回収できるのか」という点ではないでしょうか。

ここでポイントとなるのが太陽光発電における「発電効率」です。

そこで、今回は太陽光発電の発電効率について、基礎知識から効率を上げるポイントまで詳しく解説します。

環境配慮型住宅に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

 

太陽光発電成功のカギは“発電効率”

「発電効率」とは、変換効率と呼ばれることもあり、太陽光エネルギーをどれほど電気エネルギーに効率良く変換しているかを表す指標です。

発電効率が高ければ高いほど、パネル一枚あたりが生み出している電力量が多いということになります。

では、「発電効率」はどのようにして示されるのでしょうか。

ここでキーワードとなるのが、以下の2つです。

  • モジュール変換効率
  • セル変換効率

これらは、太陽光パネルの発電効率を評価する方法で、メーカーやシーンによってそれぞれ使い分けています。

では、それぞれ詳しく解説していきましょう。

 

モジュール変換効率

モジュールとは、基準寸法や基準単位を意味しますが、太陽光発電においては、パネル1枚とほぼ同じ意味です。

つまり、モジュール変換効率とは、太陽光パネル1枚当たりの変換効率を示し、以下の公式で求めることができます。

 

モジュール変換効率(%)= パネルの公称最大出力電力量(W) / パネル1枚当たりの面積(㎡)× 100

 

モジュール変換効率は、机上の空論ではなく実際の状態に近い数値となるため、どのメーカーのパネルを採用するか比較検討する際は、この数値を見比べると良いでしょう。

 

 

セル変換効率

実は、多くのパネルメーカーはこちらのセル変換効率をカタログに記載しています。

その理由は、ずばり「モジュール変換効率」よりも高い数値が出せるからです。

まず、セルとは、太陽発電モジュール(パネル)を構成している最小基本単位で、約10cm四方のサイズです。

セル変換効率は、以下の公式で求められます。

 

セル変換効率(%)= 出力電気エネルギー(W) / 太陽光エネルギー(W)× 100

 

セル同士を繋げた際に起こる電気抵抗の影響で効率が落ちることを加味していないため、モジュール変換効率よりも高い数値が出ます。

そのため、モジュール変換効率と混同して比較してしまえば、大きな勘違いとなってしまうので注意してください。

 

 

発電効率の限界を知ることも重要

太陽光パネルの種類や原料によっても発電効率が大きく異なりますが、一般的に住宅に設置されるシリコン系太陽電池の場合、モジュール変換効率は平均で14〜20%程度です。

そして、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究によると、理論上29%が限界という結果も出ています。

 

発電効率

(引用:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)|世界一のモジュール変換効率40%超を目指す、太陽電池開発中

 

ただし、同じメーカーのシリコン系太陽電池でも、単結晶系・多結晶系では、発電効率は異なります。

単結晶系シリコン系パネルは、価格が高いものの発電効率も良く、多結晶系シリコンパネルはそれと比べると多少劣りますが、価格と性能のバランスが良い点が特徴です。

ですから、発電効率を気にするあまり、住宅の総予算に合わない高価なパネルを選んでもいけません。

複数メーカーのモジュール変換効率や価格、限界発電効率をしっかり把握して、設備機器を選びましょう。

 

施工事例

 

 

発電効率が悪くなる理由と上げるための5つのポイント

太陽光発電システムを導入するには、どうしてもそれなりの初期費用がかかってしまいます。

それを少しでも短期間で回収するためには、発電効率をできるだけ高くキープしなくてはいけません。

ただし、残念ながら、日頃のメンテナンスや設置場所によっては、メーカーの期待発電量に届かない場合もあります。

そこで、発電効率を悪くしないためのポイントや、効率良く発電するポイントについて解説します。

 

 

ポイント① 敷地の気候環境を事前確認する

当然のことながら、雨天よりも晴天時の方が発電量は多いため、まずは敷地のある地域の日照時間や降水日数を調べてみましょう。

ちなみに、「日照時間の長さ」・「降水日の少なさ」のランキングは以下の通りです。

 

気象ランキング

総務省統計局|統計で見る都道府県のすがた2022のデータを元に作成)

ちなみに、私たち“蓮見工務店”のある埼玉県は、2020年のデータによると、降水日数が全国で3番目に少ないため、比較的太陽光発電に適していると言えます。

 

 

ポイント② パネルの設置位置を確認する

日照時間が極端に短かったり雨天が多いエリアでなければ、太陽光発電を前向きに検討しても良いでしょう。

そこで次に重要となるのが、パネルの設置位置です。

いくら地域の条件が良かったとしても、常に周辺建物の影になっていては意味がありません。

まず、大前提として隣地の建物の影にならない場所を選んでください。

そして、最も最適とされている方角は南ですが、南東や南西でもそれほど遜色のない太陽エネルギーを得られます。

ちなみに、北側に設置すると南側の60%程度、東・西側ですと80%程度まで発電量が落ちてしまうとも言われています。

ただし、設置位置を意識するあまり、敷地形状に合わない平面プランにしてしまえば、住み心地に支障をきたしてしまうでしょう。

あくまでも方角は目安なので、周辺環境も鑑みて理想の間取りと発電効率のバランスを見極めることが肝心です。

また、パネルの傾斜角も重要です。

最も発電率が良いのが30°で設置した場合で、水平に設置した場合の110%程度の発電量を確保できます。
(※双方南面に設置した場合)

 

 

ポイント③ 定期清掃を行う

太陽光パネルを劣化させてしまう原因はいくつもありますが、その中でも最も気を付けなくてはいけないのが「ホットスポット現象」です。

パネルに汚れが付着してその部分が長期間日陰になってしまうと、局部的に熱くなり、最悪の場合は発火してしまいます。

パネルは、セル同士が直列接続されて形成されているのですが、影となって発電していないセルが抵抗体となり、電気の流れをそこで止めてしまうからです。

ホットスポットを防ぐには、定期的に専門業者に清掃してもらうのが一番の方法です。

落ち葉や鳥のフンなどで汚れやすい環境の場合は、特に気をつけましょう。

 

 

ポイント④ 発電量を常にモニタリングする

システムの中でほんの少しの不具合があるだけで、場合によっては発電効率は下がってしまいます。

しかし、屋根の上に設置された太陽光パネルはもちろん、精密な周辺機器の故障を一般の方が判断することは困難です。

発電量モニターを常にチェックしておけば、正常にシステムが稼働しているかどうかをはっきり目視できますし、少しでも発電量が減ればどこかしらに不具合があるということが分かります。

また、先ほど紹介したホットスポット現象の出現にも早めに気が付けるでしょう。

さらに、データを蓄積しておけば前年との比較ができ、長期的なメンテナンス計画を立てることもできます。

ただし、発電量モニターがなくても太陽光発電は可能であるため、初期費用を少しでも抑えようと設置しないケースも少なくありません。

しかし、劣化をいち早く見つけて発電効率を高く維持するために欠かせない装置です。

 

 

ポイント⑤ 定期点検は欠かさない

太陽光パネルや、その他周辺機器の不具合・劣化は、発電効率に直接影響を及ぼします。

しかし、機器は日頃目につきにくい場所に設置されているため、どうしても自主点検は困難です。

ですから、太陽光発電システムを導入した場合は、必ず定期的な保守点検を受けましょう。

点検の具体的な内容は、パネルや周辺機器、関連部材の劣化状態や、パネルやケーブルの電圧、ホットスポットの出現などです。

点検を怠れば、発電効率が知らない間にどんどん下がるだけではなく、最悪の場合は発火やパネルの落下事故なども引き起こしかねません。

ちなみに、2022年現在は太陽光発電機器の保守点検は、2017年4月に施行された固定価格買取制度(FIT制度)によって義務化されています。

 

施工事例

 

 

温度や気温も発電効率に影響するって本当?

太陽光発電

太陽光パネルは、日当たりがいいところに設置した方が発電効率が上がると既に解説しましたが、実はパネルが高温になりすぎても良くありません。

その理由は、温度が上がると電流は上昇するものの、それ以上に電圧が下がってしまうからです。

電力(W)は、電流(A)× 電圧(V)で求めるため、結果的に発電量も減ってしまいます。

では、最も発電効率の良い温度は何度なのでしょうか?

その答えは、「25℃」です。

モジュール変換効率を測定する基準温度にもなっています。

最も効率良く発電できる温度とされており、それ以上は1℃上昇するごとに0.5%効率が落ちるとも言われています。

ここで間違ってはいけないのが、25℃は外気温ではなくパネルの表面温度であるという点です。

つまり、照りつくような真夏はいくら快晴日であってもそれほど発電量は期待できません。

日中の気温が40℃近い日には、パネル表面温度は80℃近くにまで上昇することもあり、計算上は約28%も効率が低下することになります。

一方、冷え込む真冬でも晴れていればパネルの表面温度が適度に上がるため、効率良く発電できることもあるのです。

つまり、太陽光発電には太陽“熱”は不要なのです。

パネルの種類によっても熱への耐性が異なるため、立地条件や設置条件、その地域の気候に合わせて適切なものを選べるよう、メーカーや建築会社へ相談しましょう。

 

施工事例

 

まとめ

太陽光発電は、注目が高まっている装置ではありますが、導入するためにはそれなりの費用を要します。

ですから、どうしても設置後の発電効率が気になる方は多いはずです。

そこで重要なのが、発電効率を下げないためのポイントをしっかりと抑えるということ。

また、設置する際には知識の豊富な設計会社や建築会社に依頼することも重要です。

太陽光発電を新築住宅に取り入れたい場合は、まず十分な知識と実績のある会社に相談してください。

 

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施工事例

 

 

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蓮見幸男

蓮見幸男

住まいの知恵袋、家づくり問題解決仕事人

住宅に関するさまざまな事柄(耐震・温熱・耐久性など)を計算やシミュレーションにより可能な限り〝見える化"し、安心・快適な唯一無二の住まいをリーズナブルにお届けしたいと考えています。

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