これからは住宅にも自然エネルギーを。再生可能エネルギーとの違いやメリットについて

自然エネルギー

SDGsの観点からも注目が高まっている“自然エネルギー”ですが、具体的にどのようなものか知っていますか?

国や電力会社が主体となって取り組む課題と考えている人も多いですが、実は住宅一戸一戸に取り入れることもできます。

しかし、実際にどのような方法があるかはそれほど知られていません。

そこで、今回は“自然エネルギー”の概略や再生可能エネルギーとの違い、住宅に取り入れる方法などについてお話しします。環境配慮型住宅の建設をご検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

 

そもそも“自然エネルギー”とは?“再生可能エネルギー”との違いは?

今や、私たちの生活に欠かせない電力エネルギーですが、従来の化石燃料などを使った火力発電は、資源の枯渇が迫っていることや多量の二酸化炭素を排出する点から、その運用に限界が近づいてきています。

 

(引用:東京ガスネットワーク

(引用:関西電力|エネルギー問題と原子力

 

そこで、世界各国が急務で進めているのが「自然エネルギーの導入」です。自然エネルギーとは、太陽光や日射熱、風力、地熱、潮力など“自然の恵み”を活用して生み出されたエネルギーの総称です。今まで主流であった火力発電の抱える問題を解決すべく、自然エネルギーの導入が急ピッチで進められています。

しかし、私たちの生活はもはや、1日・1時間でも電気の供給が止まれば大混乱につながってしまうため、どの国も一斉に100%自然エネルギーに切り替えることはできていません。

ところが、デンマークやスウェーデン、カナダなどの自然エネルギー先進国では60%を超えるエネルギーを自然から得ています。

 

(引用:自然エネルギー財団|国際エネルギー

 

ただし、ここで着目しなくてはいけないのが、デンマークやスウェーデンなどの自然エネルギー比率の高い国と日本とでは、消費エネルギー量が桁違いであるという点です。つまり、比率ではグラフの通りですが、自然エネルギー供給量では日本の方がはるかに多いという事がみえてくるのです。日本と同じ技術立国で、環境先進国ともいわれるドイツとさほど変わらない量(約200テラワット)の自然エネルギーの供給が現状でもあります。

また、比較的消費エネルギー量が大きいにも関わらず自然エネルギー比率の高いカナダやブラジルは、広い国土と潤沢な水量に恵まれた水力発電が圧倒的であり、それらの国と日本を単純に自然エネルギー率で比較することはできません。

しかし、だからと言ってこのままで良いという訳ではなく、政府は2030年までに達成すべき目標として「エネルギーミックス」を掲げており、さまざまな手法を用いて自然エネルギー率を36〜38%にまで上げることを宣言しています。比率を上げるためには、さまざまな形で再生可能エネルギーを増やすと共に、消費するエネルギーを減らしていくことも、とても効果的な事になります。

 

(引用:SDGs Action!|エネルギーミックスとは? 日本の2030年度目標や現状、課題を紹介

 

「自然エネルギー率の向上」と「消費電力の削減」。これこそまさに日本が達成すべき“2つの課題”ではないのでしょうか。

 

ちなみに、自然エネルギーと合わせてよく耳にするのが「再生可能エネルギー」ですが、こちらは「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用および化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」の中で以下のように定義されています。

第二条(定義)

3.この法律において「再生可能エネルギー源」とは、太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるものをいう。

引用:e-GOV法令集|エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用および化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律

 

第四条(再生可能エネルギー源)
法第二条第三項の政令で定めるものは、次のとおりとする。

一 太陽光
二 風力
三 水力
四 地熱
五 太陽熱
六 大気中の熱その他の自然界に存する熱(前二号に掲げるものを除く。)

七 バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(法第二条第二項に規定する化石燃料を除く。)をいう。)

自然エネルギーとの違いは、「必ずしも自然由来であるとは限らない」という点です。

例えば、再生可能エネルギーに含まれる「バイオマス」は、下水汚泥や生ごみをバイオガス化して発電利用するし、最近は建築廃材木材や林地未利用木材をエネルギー変換する技術も進んでいます。(参考:住友林業|木質バイオマス発電

つまり、自然エネルギーは再生可能エネルギーの一部ということです。

 

施工事例

 

 

住宅に導入可能な自然エネルギーは?どんな種類がある?

自然エネルギー・再生エネルギーと聞くと、電力会社などが大規模に取り組む事案のように感じるかもしれません。

しかし、住宅という小さい単位でも導入可能なシステムはいくつもあります。

そこで、ここではその一部について詳しくお話しします。

 

● 太陽光発電

一般の方に最も認知されているのが、太陽光発電ではないでしょうか?つい最近でも、東京都や川崎市において新築建物への太陽光パネルの設置を義務付ける条例案が発表されたりしています。

国が様々な補助制度を設けたことに加えて、度重なる電気料金の値上げもあり、年々戸建住宅への導入率は上昇しています。

「太陽光を利用した発電機器あり」の住宅は全国で157万戸となり,5年前と比べて105万戸の増加となりました。普及率で比較すると,5年前の1.0%から3倍の3.0%となっています。
これを住宅の所有の関係別にみると,持ち家で「太陽光を利用した発電機器あり」の住宅は148万戸で持ち家全体の4.6%である一方,借家では9万戸で借家全体の0.5%と,借家への普及率は依然低い状況となっています。
※2017年のデータ統計結果

引用:総務省統計局| 省エネルギー設備等の住宅への普及について

 

環境面への配慮だけではなく、震災に伴う停電への対策として導入を検討する方も増えています。普及率が高まっていくにつれて導入コストも下がってきていることから、今後も導入実績は増えていくことが期待されているのです。

 

〈関連コラム〉
蓮見工務店|コラム|東京都太陽光パネル義務化で埼玉への影響は?

● 太陽熱利用

太陽光発電は日光を利用して発電するのに対して、日射熱を活用する方法もあります。それが、太陽熱利用です。太陽光発電がエネルギー変換率7〜18%程度なのに対して、太陽熱利用は40〜60%ほどエネルギーに変換できます。ただし、熱エネルギーは給湯や冷暖房に使い、電力に変換することはできません。

屋根や外壁に設置された集熱器内の不凍液や空気を太陽熱で温めて、お湯を作ったり床下を温めて活用します。「空気集熱方式」のシステムであれば、夏場に軒先の換気口から取り込んだ空気によって日射で熱された屋根裏の熱気を棟より排出したり、夜間の放射冷却によって冷やされた屋根裏の空気を室内に導入するなど、二次的な効果も期待できます。

● 地中熱利用

地中熱利用とは、地中20〜100mの温度が外気温の影響を受けずに10〜25℃で安定していることを利用したものです。主に、住宅ではヒートポンプユニットと組み合わせることで、冷暖房や給湯などに活用されます。

最も普及しているのが、クローズドループ式ヒートポンプで、地中に地熱を回収するための配管を埋め込み、そこに不凍液を循環させてヒートポンプの熱源にします。

 

(引用:産総研マガジン|「地中熱」とは?科学の目でみる、 社会が注目する本当の理由

 

最近は国としても推奨していますが、まだまだ導入コストが高い点は否めません。

しかし、地盤改良工事と合わせて施工すれば、施工費用を削減できますし、効果的な気象条件についてなどについても研究も進められれば、これから注目すべきエネルギーシステムと言えるでしょう。

 

(引用:環境省|令和2年度地中熱利用状況調査の集計結果

● 風力自家発電

太陽光発電のように電力会社に余剰電力を売ることはできませんが、戸建住宅に小型風力発電機を設置することもできます。立地条件や屋根形状によって太陽光発電パネルが設置できない場合、ベランダなどの小さなスペースにも設置できる点がメリットです。

ただし、住宅密集地では騒音トラブルなど近隣トラブルに発展しかねないため、導入は慎重に検討しましょう。また、建築基準法や消防法、騒音規制法などの法令が関連するため、設計者や自治体とじっくり相談してから決断してください。

 

 

“自然エネルギー”を導入するメリットは?

自然エネルギーを住まいに導入するメリットとして、真っ先に思い浮かぶのが「環境問題解決への貢献」です。確かに、戸建住宅への自然エネルギー導入率が上がれば、確実に地球温暖化などの解決に向けて大きく前進するでしょう。実は、自然エネルギー導入のメリットは、これだけではありません。

 

 

その① 光熱費(電気代)が減る

少し前までは、「太陽光発電をしても損」という説も一部ではありました。余剰電力の固定価格買取制度(FIT)において、売電価格が下がってきているのも事実です。

しかし、そもそもFITは、初期費用を回収することを目的に制定されたものということを念頭に置かなくてはいけません。売電価格が下がってきたということは、太陽光発電システムや蓄電器の導入コストが下がってきていることを意味します。

最近では、主流のシリコンセルに代わるものとして、原材料コストや製造コストを大幅に削減できる素材の研究開発も進んでおり、今後も更なるイニシャルコストダウンが期待できます。

 

太陽光発電導入コストの推移

(引用:環境省|平成 31 年度以降の調達価格等に関する意見

地中熱利用についても、今後太陽光発電と同じような導入コスト推移を辿ることが期待されており、これからどんどん導入のハードルが下がってくることが予想できます。

また、技術開発が進むにつれて、各設備機器の発電効率やエネルギー変換率も向上しているため、光熱費が今以上に削減できるようになることは明確です。

ですから、「高い導入コストをかけてもなかなか得しない」から設置自体を止めるのではなく、日頃の光熱費が削減できるポジティブな面に着目することの方が重要と言えるでしょう。

太陽光発電システムについては、初期投資ゼロで導入できる方法もありますので、まずは取り扱い工務店に相談してみることをおすすめします。

 

 

その② 節電意識が高まる

自然エネルギーを取り入れることで、今までよりも光熱費が下がることはもちろん、より一層省エネへの意識が高まる方が多いです。

その理由のひとつはは、消費電力が“見える化”するから。

太陽光発電を設置した場合、発電モニターとHEMS(Home Energy Management System・ホーム エネルギー マネジメント システム)を合わせて設置すれば、今・どこで・どれほどの電気を消費しているかが明確になるため、無駄が露呈して節電意識につながるということです。

 

(引用:Panasonic

 

また、最新のモニターですと季節や時間帯での消費電力量をデータ蓄積することもできるため、長期にわたってどれほどの節電を達成できたかも明確になります。そのため、「電気を無駄遣いしている」「先月より少し削減できた」などの発見ができ、より“電気の無駄遣い”への意識が高まるはずです。

 

 

その③ 非常用電力として活用できる

自然エネルギーは、電力会社から供給される電力とは異なり、システムに大きな被害がなければ災害時にも利用可能です。そのため、非常用電力として設置するケースも多く、停電時も家電を運転させたり、スマートフォンの充電をしたり、電気自動車の充電ができます。

ただし、実際に非常用電源として使う場合の操作方法を事前に理解しておかなくてはいけないため、万が一に備えたシミュレーションは欠かせません。

 

〈参考ページ〉
太陽光発電協会|停電時でも電気が使えます

その④ 家の資産価値が上がる場合がある

自然エネルギーを活用できる設備が整っている住宅は、固定資産税が高くなる可能性があります。裏を返せば、その住宅の資産価値が高いと評価されていることを意味します。実際に、売電可能な太陽光発電システムが備わっている住宅は、不動産取引価格が高くなる傾向もあります。

ただし、設備が極端に古いとマイナス要素になる可能性もあるため、あくまで付随的メリットとして捉えると良いでしょう。資産価値を上げる目的で自然エネルギーを導入することは、あまりおすすめできません。

 

施工事例

 

 

 

埼玉県で“自然エネルギー活用住宅”を建てるなら補助金利用がおすすめ

自然エネルギーの導入は、日本にとってもすぐに取り組むべき課題です。そのため、国や自治体は様々な補助制度を設けています。

例えば、戸建住宅の新築や改築において、ZEH及びZEH+の一定条件を満たすと補助金が支給される「戸建住宅 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH) 化等支援事業」や「地域型住宅 グリーン化事業」を、経済産業省・国土交通省・環境省の合同で実施しています。

また、埼玉県では「住宅における省エネ・再エネ設備導入支援事業補助制度」と銘打って、下記設備を導入した住宅に対して補助金を支給しています。

 

  • 家庭用燃料電池システム(エネファーム)
  • 太陽熱利用システム(強制循環型)
  • 蓄電システム
  • V2H(電気自動車に蓄えられた電力を、家庭用に有効活用するシステム)
  • 地中熱利用システム
  • 高断熱窓

 

自然エネルギーの導入には、どうしてもまとまった費用がかかってしまいます。しかし、これらの補助制度をうまく利用すれば、金銭面でのハードルを下げることは可能です。「費用がかかるから無理」と感じている方は、ぜひ補助金についても設計・施工会社や自治体へ確認してみましょう。

 

〈関連コラム〉
蓮見工務店|コラム|ZEHのメリットを活かす家づくり

〈参考ページ〉
国土交通省|ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの推進に向けた取り組み
埼玉県|【令和4年度】住宅における省エネ・再エネ設備導入支援事業補助制度

 

施工事例

 

 

 

まとめ

自然エネルギーは、今や環境問題への意識が高い方だけのものではありません。日々の生活コストや災害時対策の側面でもメリットが得られるため、全ての人にとって有意義なものと言えるのではないでしょうか。

今まで導入の妨げになっていた初期コストも、年々下がってきており、一方で電気やガス、灯油などの料金は上がる一方です。イニシャルコストとランニングコストを総合的に考えた場合、今後住宅の新築をお考えの方には、是非とも検討していただきたいものです。

 

私たち”蓮見工務店”は、「地球環境」と「住まい手の快適な生活」の両方に寄り添い、自然エネルギーを活用できる住まいづくりに取り組んでいます。

マイホーム建設をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 

施工事例

 

 

 

蓮見工務店の家づくりへの想い

注文住宅,家づくり,設計

私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、そして設計事務所として培ってきたデザイン性、高性能な家を提供させていただきます。

「熱を集め、移し、蓄える」
「風を通し、涼を採り、熱を排出する」
「直接的な日射を避ける」
「断熱・気密性を高める」

などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。

快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、全てのバランスで実現できます。

そして、経験豊富な職人の手によってカタチになるのです。

私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、お客様の一棟に全力を注いでまいります。

注文住宅やリフォーム、リノベーション、店舗などの建築をご検討中の方には、これまでに携わったお宅をご見学していただけます。

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蓮見幸男

蓮見幸男

住まいの知恵袋、家づくり問題解決仕事人

住宅に関するさまざまな事柄(耐震・温熱・耐久性など)を計算やシミュレーションにより可能な限り〝見える化"し、安心・快適な唯一無二の住まいをリーズナブルにお届けしたいと考えています。

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