板張り天井を後悔しないためのコツ|メリット・デメリットと材料、事例を解説

天井の“板張り”を後悔しないためのコツ|メリット・デメリットや材料、採用事例を解説

最近、板張り天井を取り入れた内装デザインが人気です。

そこで今回は「板張り天井」に用いられる材料の種類とそれぞれの特徴、メリット・デメリットと施工事例を紹介します。

板張り天井を検討している方が併せて知りたい「木目クロス」についても解説しますので、これからマイホームの新築やリノベーション計画を始める方はぜひ最後までご覧ください。

この記事のポイント
● 板張り天井はどの材料を選ぶかによって、仕上がりや性能が変わります。

● 板張り天井にはデザイン性・快適性・環境面においてメリットがある反面、事前に知っておいた方が良いデメリットや注意点があります。

● 私たち「蓮見工務店 + 蓮見建築設計事務所」は、“手作りの家”をモットーに、お客様のご要望を叶えた住宅を数多く手がけてきた実績があります。

 


目次


 

板張り天井とは|材料の種類別特徴

板張り天井とは|材料の種類別特徴
施工事例「三世代で育んだ庭と調和する家

板張り天井とは、天井仕上げ材に木質建材を施工する手法です。

住宅においては、石膏ボード(P.B)の上にビニールクロスを張ったり塗装仕上げにする方法が主流な中、最近「板張り天井」を取り入れる事例が増えています。

板張り天井に用いられる材料は主に3つに分けられてそれぞれ特徴が異なりますので、チェックしておきましょう。

無垢材(羽目板)

天然木から製材された羽目板(パネリング)を天井材として使うことから、羽目板天井と呼ばれることもあります。

長手方向に溝加工が施されており、その部分に釘を打ち次の板材を連結させるため、表面から固定釘が見えません。

無垢材ならではのナチュラルな木目と色合いが魅力です。

ただし、空間の湿度変化により、板材と板材の間の継ぎ目が開いてくることも珍しくありません。

また、樹種によっては経年変色するものもあります。

日本では、国産材である杉や桧(ひのき)の羽目板天井が代表的です。

天然木化粧板(突板・挽板化粧板)

原木を厚さ0.2〜0.3mmの薄くシート状にスライスした「突板(つきいた)」や、厚さ2〜3mmの板状にした「挽板(ひきいた)」を合板やMDFへ接着した化粧板も天井材として用いられます。

表面は天然木ならではの自然な木目や色合いですが、パネル自体は無垢材ではないので材料の軽量化による施工効率性アップや、無垢材の弱点でもある湿度変化による変形リスクを抑えられます。

また、無垢材量が少ないため、希少価値の高い樹種や高価な樹種をデザインへ採用しやすい点も魅力です。

しかし、無垢材ほど調湿効果はありません。

プリント化粧板

プリント化粧板とは、ウレタンコート紙などへ木目を“印刷”し、それを合板やMDFへ貼り合わせたパネル材です。

表面材は天然木由来ではないため木目や色合いは人工的ですが、他の材料よりも安価なため、天井材以外には量産型家具の面材などにも使われます。

ポイント
板張り天井を「羽目板・天然木化粧板・プリント化粧板」のどれにするかによって、見た目の雰囲気が変わります。

また、板張り天井のメリット・デメリットも異なりますので、ご予算やデザインのイメージに合わせて適切な材料を選びましょう。

 

板張り天井のメリット

板張り天井のメリット
施工事例「田園風景に癒される焼杉板張りの家

板張り天井には、主にデザイン面においてメリットがあります。

内装に高級感をプラスできる

板張り天井は、部屋の雰囲気に“高級感”や“重厚感”をプラスできます。

また、白い壁などシンプルなデザインで構成されている部屋でも、天井を板張りにするとデザインのアクセントになります。

最近は、天井全面を板張りにするデザインだけではなく、折下げ天井・折上げ天井や、吹き抜け部分の天井、小上がり空間の天井など、部分的に板張りを採用する事例も珍しくありません。

羽目板には調湿・リラックス効果がある

天然木は、細胞内の空隙(くうげき)へ室内の湿気を抱え込み(除湿)、乾燥時にはそれを放出(加湿)する調湿性能があります。

木材の調湿効果
(引用:林野庁|木材は人にやさしい

また、杉材などから放たれる“木の香り”には、脳活動や自律神経活動を穏やかにしたり血圧上昇を抑えたりする効果が認められており、木によるリラックス効果も期待できるでしょう。

木の香り成分によるリラックス効果
(引用:林野庁|科学的データによる木材・木造建築物のQ&A

天然木化粧板にも一定の調湿効果やリラックス効果がありますが、羽目板には劣ります。

羽目板は部分張り替えしても色違いがすぐ馴染む

ビニールクロスや塗装、工業製品である化粧板は、同じ製品・品番でも製造ロットが異なると微妙に色味が違い、部分張り替えした箇所が目立ってしまうかもしれません。

その点、羽目板は元々木目や色合いがランダムなので、部分張り替えした箇所が目立ちにくく、経年変色していてもすぐに新しい部材も変色するため、色違いがすぐに馴染んで気にならなくなります。

羽目板は廃盤にならない

天然木を乾燥・製材した羽目板は、基本的には廃盤になりません。

特に国内で多く生育している杉や桧(ひのき)は、今後も継続して入手しやすいはずです。

ただし、輸入材や希少性の高い樹種は10年後・20年後に同じような羽目板が入手できない可能性がありますので、材料は慎重に検討しましょう。

羽目板・天然木化粧板は環境にやさしい

「木を伐採すると森が破壊されて環境に悪い」というイメージがあるかもしれませんが、近年は積極的に木材を利用して“森を活性化させる”動きが盛んです。

森林の活性化には木材利用が必要
(引用:林野庁|木材の利用の促進について

羽目板や天然木化粧板は、ビニールクロスのような石油系原料を使う材料と比べて、環境に配慮したサステナブルな建築材料として採用される事例が増えているのです。

特に杉や桧などの国産材利用は材料運搬時の省エネルギー化や二酸化炭素排出量削減へ効果的とされています。

(引用:一般社団法人 ウッドマイルズフォーラム


ポイント
板張り天井へ自然由来の「羽目板・天然木化粧板」を用いると、デザイン面だけではなく、居住空間の快適性や環境面におけるメリットも得られます。


 

施工事例



板張り天井のデメリット・注意点とその対策

板張り天井のデメリットや注意点とその対策
施工事例「屋根組と開放的ホールが特徴の家

板張り天井にはいくつかの観点からメリットがありますが、一方で事前に知っておかないと後悔してしまうかもしれないデメリットや注意点もあります。

ぜひ対策方法と合わせて知っておきましょう。

新築(リフォーム)費用が高くなる

天井にビニールクロスを張ったり塗装したりするのに比べて、板張りは一日に施工できる面積が限られます。

また、板材などの材料費も安くはありません。

そのため総じて他の内装仕上げと比べるとコストは割高です。

(天井仕上げの種類)(施工単価目安)
板張り3,000〜6,000円/㎡
ビニールクロス1,500〜3,000円/㎡
塗装1,000〜1,500円/㎡


対策方法
ご予算に合わせて板張り天井にする範囲を決めましょう。

低コストなビニールクロスや塗装と組み合わせたり、パネル材の種類や産地、樹種によって単価を調節する方法がおすすめです。


圧迫感が出る

板張り天井は、白い天井と比べると圧迫感が出てしまう可能性があります。

特に、トイレなどの狭い空間や天井高が低い場所へ採用する場合は要注意です。

対策方法
板張り天井は、吹き抜けなど天井高の高い部分へ採用するのがおすすめです。

また、白木など明るい色味の材料を選定すると、圧迫感を軽減できます。


キッチンではホコリが定着する可能性がある

羽目板や天然木化粧板は、水拭きしたり洗剤を使って掃除するとシミになる可能性があります。

そのため、油煙がついてベタついてホコリが付着しても、うまく掃除できないかもしれません。

対策方法
キッチンには掃除しやすいビニールクロスを採用するか、表面コーティングが施されているパネル材を採用しましょう。

キッチンなど汚れやすい空間の天井材を選ぶ際には、事前にお手入れ方法についても知っておくことが重要です。


 

施工事例



【板張り天井の施工事例で見る】設計デザインのポイント

「蓮見工務店」は、これまで数多くの板張り天井を採用した住宅を手がけてきた実績があります。

その中からいくつか抜粋して、設計デザインのポイントと併せて紹介します。

高さの違う天井で素材を変える

施工事例「ダークグレーのシックな外壁が特長的な大屋根の家

こちらは、天井が一段上がっている部分にだけ板張りを採用した事例です。

これでしたら、板張りのデメリットである圧迫感が気になりません。

また、シンプルなインテリアデザインのアクセントとしても効果的です。


収納・壁・床と色味を揃えてトータルデザインする

老後まで住める家には小上がりスペースがおすすめ
施工事例「『楽しむ家づくり』を満喫する、高性能住宅

こちらは杉羽目板張りの天井をメインにした事例です。

空間ごとに珪藻土塗りやクロス仕上げと組み合わせています。

羽目板には保護塗装を施しているため、汚れの気になるキッチンへ採用しても安心です。

施工事例「『楽しむ家づくり』を満喫する、高性能住宅

フローリングや造作収納、柱、カウンター材、腰壁材と木目を基調とした部分の色味を揃えることで、統一感のあるインテリアデザインに仕上がっています。


板張り天井とシンプルな照明を組み合わせる

施工事例「ビルトインガレージと木塀のある家

板張り天井は木目やパネル材の継ぎ目ラインが現れるため、天井へ設置する照明器具はシンプルなものを選びましょう。

こちらの事例は、ダウンライトをメインにして、ダイニングスペースにはアクセントとしてシンプルなデザインのペンダントライトを組み合わせました。

ポイント
板張り天井の美しさを効果的にデザインへ取り入れたい方は、施工事例が豊富な会社へ相談しましょう。

間取りへの取り入れ方によって部屋の雰囲気が変わるため、いくつも事例をチェックして理想に近いプランを見つけてください。


 

施工事例


板張りを手軽に表現できる「木目クロス」

板張りを手軽に再現できる「木目クロス」

板張り天井“風”なインテリアを手軽に表現する方法として、「木目クロス」という選択肢もあります。

ただし、羽目板や化粧板の場合とはメリット・デメリットが異なるため注意してください。

メリット
● 羽目板や化粧板よりもコストが安く、工期が短い。
● 木目や柄(ヘリンボーンや市松など)、色の種類が豊富。
● 飽きたり汚れたりしても簡単に張り替えられる。
デメリット
● 羽目板や天然木化粧板のような調湿性やリラックス効果はない。
● 耐用年数が短く、5年程度で継ぎ目が開いてきたり剥がれたりする可能性がある。
● 定期的な張替えが前提である。
● 木目はあくまでもプリントで、一定間隔で同じ柄が繰り返される。


木目クロスを選ぶ際は、これらのポイントを踏まえて採用を検討してください。

 

〈おすすめコラム〉
【建築士解説】車椅子で生活できるバリアフリーの新築住宅|間取りの工夫と注意点



板張り天井は屋外にもおすすめ


施工事例「ビルトインガレージと木塀のある家

板張り天井を採用できる範囲は室内だけに限りません。

深い軒の天井やインナーバルコニー、インナーポーチへ取り入れるがもおすすめです。

外観デザインに趣がプラスされ、アクセントにもなります。

ただし、湿気や紫外線には弱いため、雨や太陽光が直接当たらない場所へ採用しましょう。


 

施工事例

 

まとめ

老後まで住める家には広めな玄関がおすすめ
施工事例「三世代で育んだ庭と調和する家

「板張り天井」には、デザイン性・快適性や環境面におけるメリットがある反面、事前に知っておくべきデメリットや注意点もあります。

家づくりを後悔しないためにも、板張り天井の採用実績が豊富な建築会社へ相談しましょう。

また、ずっと暮らし続けられる住まいを建てるためには、「構造・間取り・内装デザイン・材料」全てにこだわることが大切です。

  • 長寿命で高耐久な構造計画
  • 機能的で無駄のない動線を踏まえた間取り計画
  • 温もりや居心地の良さを感じられる内装デザイン
  • 住む人の健康を維持するための材料・設備選び


私たち蓮見工務店は、設計事務所として培った経験や知識と、高品質な施工技術により、お客様に心から安心していただける住まいづくりを徹底しております。

デザインと性能、快適さの全てを持ち合わせた家を埼玉県で新築・リノベーションしたい方は、ぜひ「蓮見工務店」までお問合せください。

 

施工事例

 

監修者情報

蓮見幸男

蓮見幸男

住まいの知恵袋、家づくり問題解決仕事人

住宅に関するさまざまな事柄(耐震・温熱・耐久性など)を計算やシミュレーションにより可能な限り〝見える化"し、安心・快適な唯一無二の住まいをリーズナブルにお届けしたいと考えています。

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