【板張り外壁の注文住宅】メリット・デメリットと後悔しないポイント、施工事例と解説
家の外観を決める外壁の素材はいくつかありますが、その中でも最近人気が再燃しているのが「板張り」です。
しかし「板張り外壁の長所短所が分からない」「板張り外壁のメンテナンス方法を知ってから採用を決めたい」という方も多いでしょう。
そこで今回は「板張り外壁」のメリットや魅力から、デメリット・注意点とその対策方法まで詳しく解説します。
防火地域に家を建てる時のポイントや関連する補助金など、多くの方からいただくご質問にもお答えしますので、これからマイホームの新築やリノベーション計画を始める方はぜひ最後までご覧ください。
● 板張り外壁の注文住宅を後悔しないためには、事前にデメリットや注意点を押さえて、施工実績が豊富な建築会社へ相談することが重要です。
● 「蓮見工務店 + 蓮見建築設計事務所」は、“手作りの家”をモットーに板張り外壁の家を数多く手がけています。
目次
板張り外壁とは|材料・張り方の種類
板張り外壁とは、外壁の仕上げ材に羽目板(下見板)など木質系パネル材を用いる工法です。
羽目板とは、板材の長手方向に溝が入れられており、固定釘が面から見えず連結できるようになっている板材を指します。
外壁仕上げ材に羽目板を用いる工法は、日本で古くから神社仏閣や長屋に多く採用されてきました。
歴史的な古民家などで板張り外壁を見かけたことのある方も多いでしょう。
昭和に入ると建築における防火関連の規定が強化されて一時的に採用事例は減りましたが、最近は不燃木材や不燃塗料の技術が発展したこともあり、再び人気を博しています。
材料の種類
板張り外壁の仕上げ材として用いられる材料には、いくつかの種類があります。
材料の種類 | 特徴 |
---|---|
無垢材 | 天然木を伐採後乾燥させて羽目板として製材したもの。 主に杉や桧(ひのき)などの樹種が一般的で、日本においては国産針葉樹を使うことが多い。 杉板の表面を焼き焦がして炭化させ、耐久性・防虫性を高めた焼杉(やきすぎ)も古くから住宅へ採用されている。 (レッドシダーや米杉、セランガンバツなどの輸入材を用いるケースも) |
木質系サイディング | 無垢材(羽目板)に不燃薬剤を注入して耐火性をプラスした外装に特化した材料。 |
その他、印刷技術によって木目を再現した窯業系・金属系サイディングを使っても見た目は板張り“風”に仕上がりますが、これらはあまり板張り外壁とは呼びません。
張り方の種類
板張り外壁と言っても、板材をどのように並べて施工するかによって印象が大きく変わります。
張り方の名称 | 特徴 |
---|---|
縦張り | 縦方向に板を並べる張り方 |
横張り | 横方向に板を並べる張り方 |
鎧張り(下見板張り) | 横張りの一種で、板を少しずつ重ねる張り方 |
縦桟(たてざん)入り | 横張りの一種で、等間隔に縦桟と呼ばれる棒材を設置してその間に板材をはめ込む張り方 |
突き付け | 板材を隙間なく並べる張り方で、縦張り・横張りで用いられる |
目透かし | 隙間を取りながら板材を並べる張り方で、縦張り・横張りで用いられる |
雨の多い日本においては、これまで雨水が下へ流れ落ちやすい縦張りが主流でしたが、軒下やインナーバルコニー、インナーポーチなど雨が直接当たらない場所は横張りにすると洋風な印象に仕上がります。
また、縦桟があるとそこを伝って雨が流れ落ちるので、昔から日本家屋に採用されてきました。
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板張り外壁のメリット
外壁の広い範囲もしくは一部分へ板張りを採用するメリットはいくつもあります。
- ナチュラルなデザインを外観にプラスできる
- 高級感・個性をプラスできる
- 劣化しにくい
(腐食・シロアリへの対策は必要だが、モルタル塗装外壁にあるようなクラックによる雨漏れリスクは低い) - メンテナンスの手間やコストがかからない
(モルタル塗装外壁は10〜15年程度で再塗装しなくてはいけないが、板張り外壁は材料・施工場所によってはメンテナンスフリーで建造から100年以上経つものもある) - 材料の欠品や廃盤がない
(天然素材は工業製品のように製造中止になることがないため、サステナブルな材料として注目されている) - 地球環境に優しい
(3R※を実現でき、木材の積極的利用は森の活性化※につながる)
※3R:Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の総称で、リデュースは、製造過程の資源量や発生量を少なく抑えることを指し、リユースは、使用済製品そのものや部品などの一部を繰り返して使用すること、リサイクルは使用済みで廃棄された製品を再原料化したりエネルギー燃料として活用することを指す。(参考:環境省|3R徹底宣言!)
※木材の積極的利用による森の活性化:森林の木々は定期的に伐採・植林(森林サイクル)を繰り返すことで成長が活性化して、多くのCO2を吸収する。(参考:林野庁|木材を使うと森が育つ)
板張り外壁のデメリット・注意点とその対策
板張り外壁にはいくつものメリットがある反面、ブログやSNSでは「後悔した」などのネガティブな口コミがない訳ではありません。
マイホームを後悔しないためにも、板張り外壁の採用を検討している方はデメリットや注意点とその対策方法を知っておきましょう。
費用(価格)は割高
板張り外壁は板材を一枚ずつ張っていくため、一日の施工可能面積はモルタル塗装の外壁と比べると少なく、費用は割高です。
ただし、同じく板材を張るサイディング仕上げと比べると、極端に高い訳ではありません。
仕上げの種類 | 費用目安 (材料費+工事費) |
---|---|
モルタル塗装 | 7,500〜8,500円/㎡ |
金属サイディング | 7,000〜18,000円/㎡ |
窯業系サイディング | 6,000〜15,000円/㎡ |
板張り | 8,000〜1,5000円/㎡ |
板張りにすることでご予算をオーバーしてしまう場合は、取り入れる部分の面積を調整する方法がおすすめです。
また、多くの木材を取り扱っている建築会社でしたら、板張り外壁のコストを抑えられる可能性があります。
材料によっては変形する可能性がある
板材は直射日光や雨に当たる場所に施工すると、乾燥と湿潤を繰り返して「反り・ねじれ・伸縮・割れ」など変形する可能性があります。
ただし、材料によってはそのリスクを最小限に抑えられるものもあるため、建築会社へ相談しましょう。
ただしそれでも変形を完全に防げる訳ではありませんので、直射日光・雨の当たりにくい軒下や一階周り、インナーバルコニーなど凹んだ外壁部分に採用するのがおすすめです。
腐食・蟻害のリスクがある
木材は一定の環境下に長期間さらされると、木材腐朽菌やシロアリが繁殖して耐久性が落ちてしまいます。
また、カビが繁殖すれば湿気が止まり腐食につながるだけではなく、美観も損なわれるでしょう。
被害の種類 | 発生・繁殖条件 |
---|---|
腐食 (木材腐朽菌) | 周囲の気温が30℃程度で、空気中の湿度が上昇して木材の含水率※が20%以上 (気温3℃以下、木材の含水率が20%以下の環境下では発生しにくい) |
蟻害 (シロアリ) | 木材腐朽菌の発生条件に加えて、シロアリが食べやすい柔らかい樹種(針葉樹)であること (気温3℃以下、木材の含水率が20%以下の環境下では発生しにくく、温度湿度の環境が揃ってもハードウッドは被害を受けにくい) |
カビ | 周囲の気温が15〜30℃程度で、湿度が70%以上 (気温15℃以下、湿度60%以下の環境下では発生しにくい) |
※含水率:木材など材料が含む質量と全乾重量(乾燥させてそれ以上重さが減らない時点の重さ)を比較した割合で、建築資材として使われる木材の含水率は15%程度
一日中日陰の場所や、外壁のすぐ近くに塀や植栽がある部分に採用すると、腐食や蟻害のリスクが高まります。
腐食や蟻害が心配な方は、定期的に耐水塗装や防蟻塗装を施したり、防腐剤・防蟻剤が注入された材料を選びましょう。
部分的に変色する
無塗装の板張り外壁は、紫外線によって部分的に色が濃くなったり、雨染みによって変色したりします。
日当たりの良い部分と日陰の部分、雨が当たる場所とそうでない場所で色違いが起こるケースは珍しくありません。
黒色がスタイリッシュな焼杉も人気です。(経年による淡色化あり)
ただし、これらの方法を用いても経年変色は完全に防げないため、変色を“趣”として捉えられる方に板張り外壁をおすすめします。
施工できる建築会社が限られる
板張り外壁、特に無垢材を使った外壁仕上げは、施工できる建築会社が限られます。
また、板張り外壁の変形や変色などのリスクを踏まえた設計が必要です。
そのため、板張り外壁の家を建てたい方は、設計施工実績が豊富な建築会社へ相談しましょう。
【FAQ】板張り外壁に関するよくある質問
「蓮見工務店+蓮見建築設計事務所」は、これまで数多くの板張り外壁の家を手がけてきました。
そこで、多くの方からよくいただく質問を紹介します。
Q.「防火地域・準防火地域・22条地域でも板張り外壁の家は建てられる?」
「板張り外壁は防火地域や準防火地域では採用できない」と思われがちですが、設計によってはそうとも限りません。
地域の種類 | 外壁に関する防火規定 |
---|---|
防火地域 準防火地域 | 延焼のおそれがある部分※の範囲内は、「防火構造」にすること |
法22条区域※ (建築基準法22条指定区域) | 延焼のおそれがある部分の範囲内は、外壁・軒裏に「準防火性能の技術的基準に適合する材料」を用いること |
※延焼のおそれがある部分:「隣地境界線」「道路中心線」「建築物相互の外壁間の中心線」を基準線として、階数に応じた一定の距離の範囲内に入る部分
※法22条区域: 特定行政庁が防火地域・準防火地域以外の市街地について延焼防止のために指定したエリアで、木造住宅地が指定される場合が多い
お住まいを新築するエリアが防火地域・準防火地域・法22条区域のいずれかに該当する場合は、板張り外壁の材料や工法が限定されます。
指定エリアでは国土交通大臣の認定を受けた不燃木材や木質系サイディングを用いたり、不燃材と板材の二重張り構造にしなくてはならず、その分コストが高くなる可能性があるため注意してください。
Q.「板張り外壁のお手入れ方法は?塗装は必要?」
板張り外壁は湿度による劣化のリスクを抑えられれば、モルタル塗装の外壁よりもメンテナンスが必要となる期間が長く、メンテナンスフリーな材料もあります。
ただし、性能低下がなくても経年変色は避けられません。
美観をきれいに甦らせたい場合は、褪色や変色に応じてステイン系塗料で塗装しましょう。
ウレタン系塗料などの造膜系塗料を用いると、その後10〜15年で塗装を繰り返さなくてはいけないので要注意です。
湿気がある場所や雨に直接当たる場所には、適宜、防腐・防虫塗装を施すのがおすすめです。
焼杉は経年によって表面の炭化層が劣化して黒色が薄くなるため、色味をキープしたい方は、新築時に保護塗装しましょう。
Q.「板張り外壁の家は補助金が使える可能性があるって本当?」
外壁材に限らず構造部材や内装仕上げ材などに規定以上の地産材※を使うと、補助金の対象となる地域があります。
※地産材:産地(生育地)を都道府県単位などで限定した木材で、地域材と呼ばれる場合もある。
例えば、私たち「蓮見工務店+蓮見建築設計事務所」のある埼玉県では、住宅の新築や内装の木質化において埼玉県産材を使用すると、最高「県産木材の使用量1㎥につき20,000円」の補助金がもらえます。(例:埼玉県|県産木材を利用した住宅等への補助)
その他、奈良県が実施する奈良の木を使用した住宅助成事業は、建設地が奈良県外でも対象となるので要チェックです。
「細部にまでこだわった居心地の良い家にしたい」という方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
「板張り外壁」には、デザイン面や性能面、環境面においてメリットがある一方、コストや関連法規、建築会社選びなど事前に押さえておいていただきたい注意点もあります。
家づくりを後悔しないためにも、板張り外壁の設計施工実績が豊富な建築会社へ相談しましょう。
そして、ずっと暮らし続けられる住まいを建てるために、ぜひ「構造・間取り・内装デザイン・材料」全てにこだわってください。
- 長寿命で高耐久な構造計画
- 機能的で無駄のない動線を踏まえた間取り計画
- 温もりや居心地の良さを感じられる内装デザイン
- 住む人の健康を維持するための材料・設備選び
私たち蓮見工務店はこれら全てを踏まえて、設計事務所として培った経験や知識と、高品質な施工技術により、お客様に心から安心していただける住まいづくりを徹底しております。
デザインと性能、快適さの全てを持ち合わせた家を埼玉県で新築・リノベーションしたい方は、ぜひ「蓮見工務店」までお問合せください。