【建築士解説】無垢材の住宅|デメリットと床・家具・壁・天井に取り入れるための対策
ナチュラルな家を建てたい方から「無垢材を使った住宅」の人気が高まっています。
インターネットなどで無垢材について調べると、多くのメリットが紹介されているはずです。
しかし、無垢味の住宅を建てる前に知っておいていただきたいデメリットや注意点もあります。
そこで今回は「無垢材の住宅」のメリットや魅力、デメリット・注意点とその対策方法、おすすめ樹種、その他メンテナンスなど多くの方からいただく質問を紹介します。
これからマイホームの新築やリノベーション計画を始める方はぜひ最後までご覧ください。
● 「無垢材の住宅」には、コストやメンテナンス、建築会社選びなど事前に知っておいていただきたい注意点があります。
● 「蓮見工務店 + 蓮見建築設計事務所」は、“手作りの家”をモットーに無垢材をふんだんに使った家を数多く手がけています。
目次
無垢材の魅力・メリット|床(フローリング)・壁・天井・家具
「無垢材の住宅」とは、柱や梁などの構造体に加えて床(フローリング)や壁・天井の仕上げ材、家具などに無垢材を取り入れた住宅です。
無垢材を住宅へ取り入れる主なメリットは以下の通りです。
- ナチュラルで温もりを感じられる見た目
- 天然木の持つ断熱性能や調湿効果による快適な室内環境
- 紫外線や太陽光の反射を和らげる吸光性
- 音の反射を和らげる吸音性
- 木の香りによるリラックス効果
- 無垢材(木材)は3R(※)が可能で、無垢材の積極的活用は「森林の活性化=二酸化炭素固定」に繋がり地球環境にやさしい
(参考:林野庁|木材は人にやさしい)
※3R:「Reduce(リデュース)=建材製造工程における資源量・廃棄物量を抑えて、高耐久で長寿命な仕様にすること」「Reuse(リユース)=使用済製品及びその一部を繰り返し使用することやその部品等を繰り返し使用すること」「Recycle(リサイクル)=廃棄物等を原材料やエネルギー源として再利用すること」を総称した標語(具体的な取り組み:林野庁|多様化する森林との関わり)
では、床・壁・天井・家具(造作収納)へ無垢材を採用するメリットを紹介します。
床(フローリング)
無垢フローリングの方が天然木部分が分厚いため、複合フローリング(※)よりも踏み心地が固くなく疲れにくい特性があります。
※複合フローリング:合板フローリングとも呼ばれ、無垢材の部分は表面材のみでとても薄いため、無垢フローリングよりも無垢材のメリットがもたらす効果は少ない。
木材はパイプ状の細胞によって構成されているため、石やプラスチック由来の床材よりも2~3倍の衝撃吸収能力を持つというデータもあるほどです。(参考:林野庁|木材は人にやさしい)
また、無垢材は湿気を吸収・放出する調湿効果を持つため、空気の湿度が高い季節にも表面がべたつきにくく、素足でも気持ちよく歩けます。
熱伝導率(※)が低いため、冬でも床材がひんやりと冷たくなりにくい点もポイントです。
※熱伝導率:熱移動の“しやすさ”を表す指標で、数値が小さいほど熱を通しにくく断熱性が高い。大理石の床材は熱伝導率が2.7程度なのに対して、無垢材の熱伝導率は0.12〜0.19程度と非常に低い。
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壁
室内壁の前面もしくは一部を板張り壁にする住宅事例が増えています。
アクセントウォールとして取り入れるとシンプルなインテリアでもおしゃれにグレードアップし、高級感や重厚感が加わります。
また、5〜10年に一度は張り替えなくてはいけないビニールクロスと比べて高耐久で長寿命な点も人気のポイントです。
最近は防腐処理された羽目板や木質サイディングを外壁に取り入れる住宅も珍しくありません。
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天井
壁だけではなく天井を無垢材仕上げにするデザインもトレンドです。
壁などはホワイトを基調として、天井を板張りにしてアクセントにする事例が増えています。
シンプルな中にも個性やオリジナリティをプラスできます。
部分的に天井の高さを低くした折り下げ天井と組み合わせるプランもおすすめです。
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家具や造作収納
木製家具は多く市販されていますが、特におすすめなのが空間に合わせて設計・製作する造作収納です。
造作収納を無垢材で作ると、床や壁・天井とトータルコーディネイトできます。
量産型の化粧板で仕上げられた家具はキズや汚れがついても補修しづらいですが、無垢材で作ると修理しながらずっと使い続けられる点もメリットです。
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そのため、無垢材を使った住宅の設計施工実績が豊富な会社へ相談しましょう。
無垢材のデメリット・注意点とその対策
無垢材には、デザイン性や快適性、環境面においてメリットがある反面、事前に知っておいていただきたいデメリットや注意点もあります。
家づくりを後悔しないための対策と合わせて紹介します。
価格が高くなる
無垢材は天然木の割合が高くなるため、量産型の建材と比べて価格が高くなる可能性があります。
希少性の高い樹種やブランド銘木を選ぶと、通常の2〜3倍以上のコストがかかるケースは珍しくありません。
逆に海外から輸入される木材は、過去のウッドショックでも分かる通り、様々な世界情勢の影響で価格が高騰したり納期が遅延するリスクがあります。
国産材やさらに産地を限定した地産(地域)材を家の材料に採用すると補助金が使えるケースもありますので、詳しくは建築会社へご相談ください。
色味や木目にムラがある
無垢材は天然素材であるがゆえに、同じ樹種・同じ形状の材料でも、色味や木目は均一ではありません。
実際に無垢フローリング材を採用して「色ムラが気になる」という方もいらっしゃいます。
最近はあえて色味が異なり節が入っている板材を仕上げ材に使うラスティックデザインを取り入れる事例が増えています。
「木目が目立たずすっきりとしたデザインにしたい」という方は、直線的な柾目(※)の材料を選びましょう。
※柾目(まさめ):木材の中心に近い部分を繊維に沿って裁断すると現れる直線が連なる木目。対してタケノコのような山形が連なる木目は板目(いため)と呼ばれ、木材の中心をずらした部分を裁断すると現れる。
経年変色がある
無垢材に含まれるリグニンと呼ばれる成分が紫外線によって変質することで経年変色します。
そのため、日当たりのいい場所にラグを敷いたり家具を置くと、その部分と周囲の色が大きく変わるので注意しましょう。
また、樹種によって徐々に淡色化するものと濃色化するものがあります。
表面にウレタンクリア塗装された無垢材は、塗膜が紫外線によって黄変するものもあるため、杉や桧など淡い色の樹種を選ぶ際は黄変しにくい塗料が使われているかもチェックポイントです。
部分ごとの色違いを防ぎたい方は、固定する造作家具がおすすめです。
無垢材の経年変色を抑える塗料もあります。
こまめなメンテナンスが必要
木は空気中の湿気を吸収する性能がありますが、合わせて周囲が乾燥していると抱え込んだ水分を放出する性能もあります。
そのため、徐々に無垢材が乾燥して変形や表面のささくれを引き起こす可能性があるのです。
人が歩行する無垢フローリングは、乾燥を防ぐため定期的にオイルやワックスを塗布しましょう。
ただし、木の持つ調湿性や香りによる効果は無塗装品よりも劣るため注意してください。
天井・壁へ着色塗装した無垢材を採用する場合は徐々に褪色するため、意匠面で再塗装が必要な場合もあります。
キズや凹み、シミがつきやすい
無垢材は適度な柔らかさがメリットですが、その反面、キズや凹みが付きやすいというデメリットもあります。
また、無塗装品は水分・油分が浸透しやすく、シミになりやすい点にも注意しましょう。
水分・油分だけではなく、掃除のための洗剤でもシミになる可能性もあります。
ただし、塗装品でもキズや凹み、シミを完全に防ぐことはできないため、キズ・汚れを“家族の歴史”や“家の趣き”として受け入れる気持ちが重要です。
取り入れ方によっては圧迫感がでる
壁や天井を無垢材の板張り仕上げにするデザインが人気ですが、場合によっては圧迫感が出るため注意しましょう。
特に、ウォルナットやチークなど色味の濃い樹種を選ぶ場合は注意してください。
クロスや塗装と組み合わせて圧迫感を軽減するデザイン手法もあります。
反り・伸縮などの変形リスクがある
木材は湿度の変化によって含水率(※)が変動すると、反り・ねじれ・伸縮などの変形を引き起こします。
特に薄くて長い板材はその傾向が強いため、季節によって継ぎ目が目立ったり逆に競り合って軋み音が出たりする可能性もあります。
また、無垢材にこだわりすぎず部位や部屋の用途に合わせて人工的な内装材(複合フローリングやビニール系建材)と組み合わせる柔軟性も重要です。
施工精度が仕上がりに影響する
無垢材は湿度変化によって変形しますし、樹種によっても硬さは異なります。
そのため、材料の特徴を読み取って適切に設計施工しないと、仕上がりに影響が出てしまう可能性は否めません。
そのため後悔のない家づくりを実現させたい方は、無垢材を使った家の設計施工実績が豊富な建築会社へ相談しましょう。
住宅に使われる人気の無垢材|おすすめ樹種
住宅の構造材・内外装仕上げ材へ使われる樹種は様々ですが、近年注目されているのが「国産材」です。
国産材は輸入材よりも輸送における消費エネルギー量や二酸化炭素排出量が少なくさらに原油価格変動や為替変動の影響を受けにくいため、政府主導で積極的な利用が推奨されています。
特に、杉(スギ)や桧(ヒノキ)は日本で多く育てられており、人工林の面積は日本国土の約20%を占めるほどです。
そのため、良質な木材がリーズナブルな価格で入手しやすく、多くの住宅材料として使われています。
桧・檜(ヒノキ)
唐松(カラマツ)
楢(ナラ)
自治体によっては、その地域で生育した木材を使用することで、補助金の対象となる可能性もありますので、事前に制度の詳細を確認しましょう。(例:埼玉県|県産木材活用住宅等支援事業)
【Q&A】無垢材の住宅に関するよくある質問
「蓮見工務店+蓮見建築設計事務所」は、これまで数多くの無垢材を使った家を手がけていました。
そこで、多くの方からよくいただく質問を紹介します。
Q.「無垢材は10年後どうなる?耐用年数は?」
無垢材はクロスや塗装よりも耐用年数が長く、メンテナンスすれば100年以上の寿命も十分期待できます。
ただし、床や壁などは10年・20年・30年住み続けると、キズや凹み、経年変色、シミは避けられません。
しかし、実際に無垢材の家に住んでいる方の感想をうかがうと「深みのある雰囲気になって落ち着く」という意見が大半です。
また、カラマツなど油分を多く含む無垢材は、年数を重ねるにつれて表面の艶が増します。
Q.「オイル塗装などのメンテナンス周期はどのくらい?」
フローリングなどのオイルは、人が頻繁に歩く範囲は1~2年、家具の下などは5年に一度程度塗り替えましょう。
UV塗装やウレタン塗装品は屋内であれば15~20年はメンテナンスフリーです。
Q.「キズや凹みがついた時に補修する方法はある?」
無垢材についた小さな凹みは、濡らしたタオルを当ててアイロンがけすると目立たなくなる可能性があります。
ただし、変色のリスクもあるため、必ず目立たない場所で試してからにしてください。
無垢材の表面についた浅いキズは研磨で補修する方法もありますが、表面の塗膜まで削り落とすため、必ず補修のプロに相談しましょう。
日頃のお手入れで研磨剤入りの洗剤やタワシ、ウレタンスポンジを使うと細かいキズがついて汚れが定着しやすくなるため注意が必要です。
ご自身でお手入れする場合は必ず床材・カウンター材などの取扱説明書を確認するか、建築会社へ相談しましょう。
Q.「無垢材は化学製品が含まれないオーガニック建材って本当?」
「無垢材=化学製品を含まないオーガニック建材」というイメージが強いですが、必ずしもそうとは限りません。
なぜなら、防腐剤や防虫剤を注入している木材も多いからです。
そのため、「100%天然素材を使った家を建てたい」「化学物質過敏症の発症を抑えたい」という方は、事前に材料ごとに含まれる成分を確認しましょう。
「細部にまでこだわった居心地の良い家にしたい」という方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
「無垢材の住宅」には、デザイン面や性能面、環境面においてメリットがある一方、コストやメンテナンス、建築会社選びなど事前に知っておいていただきたい注意点もあります。
家づくりを後悔しないためにも、無垢材を使った家の設計施工実績が豊富な建築会社へ相談しましょう。
そして、ずっと暮らし続けられる住まいを建てるために、ぜひ「構造・間取り・内装デザイン・材料」全てにこだわってください。
- 長寿命で高耐久な構造計画
- 機能的で無駄のない動線を踏まえた間取り計画
- 温もりや居心地の良さを感じられる内装デザイン
- 住む人の健康を維持するための材料・設備選び
私たち蓮見工務店はこれら全てを踏まえて、設計事務所として培った経験や知識と、高品質な施工技術により、お客様に心から安心していただける住まいづくりを徹底しております。
デザインと性能、快適さの全てを持ち合わせた家を埼玉県で新築・リノベーションしたい方は、ぜひ「蓮見工務店」までお問合せください。