平屋の進化形「1.5階建ての家」メリット・デメリットと間取りポイント
近年、優雅なデザインの平屋建て住宅が人気ですが、併せて「1.5階建て住宅」も注目されています。
しかし、1.5階建てという言葉は、まだそこまで広く浸透していません。
そこで今回は、「1.5階建ての家」について、メリット・デメリットや後悔しないための間取りポイントを解説します。
蓮見工務店がこれまで手がけた事例や、固定資産税などよくある質問も紹介しますので、マイホーム計画を検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
● 1.5階建ての家を後悔しないためにも、メリットだけではなくデメリットとその対策もチェックしましょう。
● 「蓮見工務店 + 蓮見建築設計事務所」は、“手作りの家”をモットーに平屋建てや1.5階建ての住宅を数多く手がけています。
目次
1.5階建てとは
1.5階建ての家は、主な居住空間が1階にあり2階に“+アルファ”の空間を配置した住宅の形で、準平屋・半平屋と呼ばれることもあります。
2階部分のプランによって、主に3つのタイプに分けられます。
- 2階部分がロフトや小屋裏収納で建築基準法上は“階”として認められないプラン
- 2階部分が通常の居室で建築基準法上”階”として認められるプラン
- 1階床レベルより半階程度上がった場所にスキップフロアを作るプラン
※天井高が1.4m未満かつ1階面積の1/2未満の場合は、建築基準法上は“階”になりません。(参考:建築基準法第92条、建築基準法施行令第2条)
ポイントは、1階と2階(スキップフロア)それぞれにどのような空間を配置するかという点です。
階数 | 配置する空間用途例 |
---|---|
1階 | 玄関 LDK 主寝室 収納 洗面脱衣室 ランドリールーム 浴室 トイレなど |
2階 (スキップフロア・ロフト・小屋裏) |
子供部屋 客間 書斎 収納 サブのトイレ・洗面 セカンドリビングなど |
1階に最低限生活できる空間をまとめる点が大きな間取りのコツです。
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【事例紹介】1.5階建ての家
「蓮見工務店+蓮見建築設計事務所」は、これまで数多くの「1.5階建ての家」を手がけてきました。
その中から特長的な事例を抜粋してデザイン・間取りのポイントを紹介します。
ロフトのある開放的なリビング
家族構成 :夫婦
建築面積 :90.33㎡(約27坪)
延床面積 :90.33㎡(約27坪)
こちらは、平屋建ての家にロフトをプラスした事例です。
リビングに造作家具も兼ねた箱型階段を設けました。
ロフト付きリビングの魅力は、開放的な印象になる天井高さです。
天井が高いため、床を部分的に上げる小上がりを作っても圧迫感がでません。
上下階で会話が楽しめるリビング
家族構成 :夫婦+子供2人+祖父母
建築面積 :193.07㎡(約59坪)
延床面積 :249.27㎡(約76坪)
こちらはリビングに面して2階ホールを配置した事例です。
2階から覗き込むように1階リビングにいる人と会話を楽しめます。
吹き抜けに面した場所に室内窓を設けた書斎も魅力的です。
スキップフロアで空間が緩やかに繋がるLDK
家族構成 :夫婦+子供1人
建築面積 :83.17㎡(約26坪)
延床面積 :120.03㎡(約36坪)
こちらは1階のLDKにスキップフロアを取り入れた事例です。
料理している人とカウンターに腰掛けた人の目線が合うように、キッチンはリビングより1段低くして、小上がり和室も作りました。
リビング上の吹き抜けを囲むように2階の廊下兼ホールを配置して、上下階で互いの気配を感じられる間取りにした点もポイントです。
1.5階建てのメリット
平屋建ての家は2階建てよりも広い土地が必要で、コストが高くなりがちです。
一方、総2階建ての家は階段の上り下りが多く、生活動線が長くなる点は否めません。
それぞれの欠点を解消できるのが、まさに「1.5階」の家です。
では、1.5階建て住宅のメリットを紹介します。
建蔽率の厳しい土地でも家を建てやすい
建蔽率(※)の低いエリアでは、必要な居住面積を確保するために広い土地が必要です。
※建蔽(けんぺい)率:「(建築面積/土地の面積)×100」で求められ、都市計画法によって用途地域ごとに上限が決められている。(例:第一種低層住居専用地域=30〜60%)
補助的なスペースを2階に配置すると、1階中心の生活を送りながらも建築面積を抑えられます。
動線がコンパクトでバリアフリーに対応できる
主な居住空間を主に1階へ配置するため、将来完全バリアフリーな生活を送れる可能性があります。
また、通常の平屋建てよりも1階部分の廊下を減らせて面積を狭くできるため、生活動線がコンパクトになる点もメリットです。
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吹き抜けを作りやすい
部分的に2階をつくると、1階に吹き抜けを作りやすくなります。
それだけではなく、吹き抜けに面してロフトや居室、ホールを作ると、上下階が緩やかにつながり、家族の気配を感じられる住まいになる点も魅力です。
高窓を設置しやすい
平屋建ては、家の中心部まで陽の光を取り入れるのが難しいケースも珍しくありません。
吹き抜けに面して高窓(ハイサイドライト)を設置すると、効果的に採光量を増やせます。
また、煙突効果(※)によって熱気を効率的に排気できるため、人気の薪ストーブを設置したり家の中に自然な風を取り込みたい方におすすめです。
1.5階建てのデメリットと対策
1.5階建てには平屋建て・総2階建ての欠点を解消するメリットがある反面、事前に知っておいていただきたいデメリットもあります。
対策方法と合わせて把握しておきましょう。
総2階建てよりコストが高くなる
1.5階建ては1階部分が生活の中心になるため、総2階建てよりは広い土地が必要で土地取得コストが高くなる可能性は否めません。
また、1階部分の面積が広くなるほど基礎工事・屋根工事の面積も増えて家の形状が複雑になりコストが割高になる可能性もあります。
そのため、平屋建て・総2階建て・1.5階建てそれぞれにした場合のコスト目安を踏まえて予算計画を立てましょう。
コストを抑えて1.5階建ての家にしたい方は、上階をロフトや小屋裏空間にするプランをご検討ください。
平屋より建築確認申請にかかる時間とコストが増える
2025年に予定されている建築基準法改正によって、木造2階建てと床面積が200㎡(60.6坪)を超える平屋建ては、全ての地域で建築確認における審査省略制度の“対象外”となり、構造関係規定・省エネ関連の資料提出が義務化されます。(参考:国土交通省|4号特例が変わります)
そのため、60坪以内の平屋を建てるよりも建築確認申請にかかる時間とコストが増える可能性があります。
建築基準法上2階建てとみなされる家を建てる際は、構造計画まで安心して任せられる建築会社を選ぶことをおすすめします。
2階を使わなくなる可能性がある
お子様が独立したりリモートワークする必要がなくなったりするなど、家族構成やライフスタイルの変化に伴って2階(ロフトなど)を使わなくなるケースも珍しくありません。
また、足腰が弱くなって階段の上り下りが大変になる将来も十分想定できます。
1.5階建ての家を建てる際は、上階をどのように使うのかじっくりシミュレーションしましょう。
部屋の用途を変えられるようにあまり作り込まない方法もあります。
二世帯住宅にする必要がない場合でも、ご家族や来客者が泊まるためのスペースとして利用するご家庭も多いです。
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1.5階建ての家を後悔しないための間取りポイント
1.5階建て住宅の間取りを検討する際は、以下のポイントをご家族でじっくり話し合いましょう。
- 平屋にした場合と総2階建てにした場合のプラン・コストと比較する。(1.5階建てにするメリットを確認する)
- 老後を見据えて、1階だけで生活できる間取りにする。
- 2階(ロフトなどを含む)にどのような“+アルファ”の空間を設けるか検討する。(例:書斎・子供部屋・収納・セカンドリビング・客間・家族で使うフリースペースなど)
- 吹き抜けによる天井高を活かせる工夫を検討する。(例:上階に室内窓付き居室を設ける、ロフト・小上がり・スキップフロアを作る)
- 階段の上り下りを減らすために、収納はできるだけまとめる。(例:ファミリークローゼットを作る)
「平屋建てにするか1.5階建てにするか迷っている」「吹き抜けが本当に必要なのか決めかねている」など、住まいに関する疑問・お悩みはぜひ“蓮見工務店”へご相談ください。
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【FAQ】1.5階建ての家に関するよくある質問
最後に、1.5階建ての家を新築しようか迷っている方からよくいただくご質問を紹介します。
Q.「1.5階建ての固定資産税は通常の平屋建てより高い?」
固定資産税額は階数で決まるのではなく、再建築費用(同じ家を建てた場合に想定される建築費用)がベースです。(参考:総務省|自治税務局資産評価室|固定資産評価のしくみについて(家屋評価))
つまり、平屋よりも1.5階建ての方が税額が高くなるとは限りません。
むしろ、平屋建ての方が必要な敷地は広くなる傾向があるため、土地にかかる固定資産税額は1.5階建より高くなる可能性があります。
Q.「1.5階建ての家はどんな家族におすすめ?」
1.5階建ての家は、以下のような方におすすめです。
- 「老後まで住み続けられるバリアフリーな家を建てたい」
- 「平屋での生活に憧れているが、十分な広さの土地が見つからない」
- 「1階で主に生活しながらも、駐車場や庭を広く取りたい」
- 「建売のような家ではなく、オリジナリティのある家を建てたい」
これらの特徴に当てはまる方は、ぜひ1.5階建てをご検討ください。
まとめ
1.5階建ての家は、平屋建て・総2階建ての“ハイブリッド版”とも言える住宅の形です。
将来のご家族構成やライフスタイルを踏まえて、ずっと暮らせる間取りにしましょう。
家づくりを後悔したくない方は、1.5階建て住宅の設計施工実績が豊富な建築会社へ相談しましょう。
デザインと性能、快適さの全てを持ち合わせた家を埼玉県で新築・リノベーションしたい方は、ぜひ「蓮見工務店」までお問合せください。