【建築士解説】“梁あらわし”天井のメリット・デメリットと後悔しないためのポイント

木造住宅の構造部である梁(はり)を見せるデザインが人気です。
ただし、家づくりを後悔しないためには事前に知っておくべき注意点もあります。
そこで今回は、「梁あらわし」の天井について、メリット・デメリットや多くの方からいただく質問を紹介します。
蓮見工務店が手掛けた美しい梁あらわしの事例写真も紹介しますので、これから家を建てる方はぜひ最後までご覧ください。
● 梁あらわし天井をプランへ採用する際は、事前にデメリット・注意点とその対策について知っておきましょう。
●「蓮見工務店 + 蓮見建築設計事務所」は、“手作りの家”をモットーに埼玉県で高性能な住宅を数多く手がけています。
目次
“梁あらわし”天井とは

梁あらわし(表し・現し)天井とは構造体である梁が見える納まりの天井で、梁見せ天井と呼ばれる場合もあります。
建築物において梁とは以下の役割をもつ構造躯体です。
- 床にかかる鉛直荷重を受けて柱に流す
- 直下に柱が無い部分の鉛直荷重を、下階の位置のズレた柱に伝える
梁は設置する部位によって名称が異なります。
【2階梁】2階床の荷重を支える役割をもち、1階の天井に見えてくる
【小屋梁】屋根荷重を支える役割をもち、最上階の天井に見えてくる
【火打ち梁】上階の床組みまたは小屋組みの水平構面における変形を防止する役割があり、縦横の接合部付近に取り付ける斜め材
(参考:公益財団法人 日本住宅・木材技術センター|在来軸組工法住宅と枠組み壁工法住宅)

“梁あらわし”天井の特徴
平(ひら)天井は梁が隠れるように天井下地を組んでパネルを貼りフラットに仕上げるのに対して、梁あらわし天井の場合は梁の下端ではなく上端に天井材を張ります。


梁あらわし天井と、屋根傾斜に沿った勾配天井や吹き抜けを組み合わせるプランが人気です。
“梁あらわし”で用いられる材料の種類
木造住宅で用いられる梁は木質梁が原則です。
※その他構造との混構造の場合は鉄骨梁を用いる場合もあります。
木質梁の主な種類は以下の通りです。
- 無垢材(スギ・ヒノキ・ベイマツ・カラマツなど)
- 集成梁(単板や小角材を積層接着した材料で、LVLもその一種)
※LVL:Laminated Veneer Lumber(和:単板積層材)の略称で、単板の繊維方向を揃えて積層した集成材。品質安定性・耐久性に優れることから、中大規模建築物の構造部材としても活用される。
無垢材の梁は太く長いものほど効果的で、梁あらわしにするためには見た目も重要になります。
そのため、予算やデザインテイストによって無垢材と集成梁を使い分けるのが一般的です。

“梁あらわし”天井のメリット

日本において、梁あらわしは古くから住宅に取り入れられてきた手法です。
多くの住宅へ採用される理由は、多様なメリットにあります。
天井を高くできる(開放感アップ)
近年は、部屋の開放感を求めて天井の高い住宅が好まれる傾向があります。
そのため、梁の高さ分でも天井を上げたいという要望は珍しくありません。
その理由は、日本人の平均身長は男女ともに1950年から2010年で10cm程度高くなり、床座(ゆかざ)からイス座の生活に移り変わったことにあると考えられます。(参考:厚生労働省|国民健康・栄養調査)
空間容積(床面積×高さ)が同じでも、床面積が広く天井が低い部屋より床面積が狭く天井が高い部屋の方が広く感じるという研究結果もあり、コンパクトな部屋でも天井を高くすると圧迫感解消(開放感アップ)を期待できるのです。
吹き抜けを広くできる
平屋建て・2階建てどちらの場合も、梁を天井の中に隠さないことで広い吹き抜けを作れます。
最近は広い吹き抜けに面してロフトやスキップフロアを設けるプランが人気です。
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室内の空気が循環しやすい
梁あらわしと吹き抜けを組み合わせると、平天井の部屋よりも室内容積が増えて、空気が循環しやすくなる点も重要なメリットです。
吹き抜けの上にシーリングファンを設置すると、空気が攪拌されて暖気が上にたまらず夏には送風によって体感温度を下げられます。
部屋の中央まで採光できる
梁あらわしにすると壁長さが上に伸びて、高窓(ハイサイドライト)を設置できます。
平屋建ての場合は屋根まで室内空間がつながるため、天窓(トップライト)も取り付けられます。
高窓と天窓はどちらも高い位置から室内に陽の光が差し込む点が特徴です。
そのため、通常の窓よりも長い時間、部屋の中央まで自然光を引き込めます。
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インテリアデザインのアクセントになる
ダイナミックな木の梁を見せることで、構造体そのものの美しさを表現でき、インテリアデザインに高級感をプラスできます。
最近は白を基調としたシンプルモダンなインテリアに木の梁や柱と無垢フローリング材を組み合わせるプランが人気です。
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“梁あらわし”のデメリット・注意点とその解決方法

梁あらわしのプランにはデザイン性や快適性においてメリットがある反面、プランへ採用する前に知っておいていただきたいデメリットや注意点もあります。
家づくりを後悔しないためにも、欠点とその解決方法を併せて把握しておきましょう。
構造計画によっては“美しくない”
梁はそもそも家の耐久性を確保するための構造部材であり、デザインアイテムではありません。
そのため、構造計画と間取り両方を綿密に検討しなければ、美しい梁あらわしにはならないので注意しましょう。
蓮見工務店は“工務店+設計事務所”の強みを活かしてデザインや住み心地だけではなく、構造にまでこだわった「手作りの家づくり」をお客様に提供しております。
コストが上がる
平天井は梁あらわし天井よりも下地材などの材料は多いですが、実は梁あらわし天井の方がコストが高くなる可能性があります。
なぜなら、“見せる”梁材は天井裏に隠れる梁材よりも材料価格が高いからです。
梁あらわしで費用がアップする場合は、その他の部分をシンプルに仕上げてコスト調整することも可能です。
ただし、ハウスメーカーによっては仕様のレパートリーが決まっており細かいコスト調整が難しい場合もあるため、施工事例が多様な建築会社に相談しましょう。
空調が効きにくい
梁あらわし天井は平天井と比べて空気の流れが複雑になるため、場所によっては空調が効くまで時間がかかる可能性があります。
また、吹き抜けと組み合わせると室内容積が大きくなるため、天井付近に暖気が溜まって足元がなかなか暖かくならないケースも少なくありません。
家の断熱性が高いと、空調機器の稼働を最小限に抑えて快適な室温をキープできます。
梁あらわしと吹き抜けを組み合わせる場合は、エアコンのサイズを上げたり床下エアコンなど足元を効率的に温める設備を導入したりするプランがおすすめです。
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屋根からの日射熱や雨音が室内に伝わりやすい
梁あらわしの納まりは天井裏(小屋裏)がないため、その下の空間が日射熱の影響を受けて暑くなる可能性があります。
また、金属屋根の場合は雨音が室内まで響くのが気になるという口コミも少なくありません。
瓦屋根も日射熱や雨音対策になりますが、重量があり建物の荷重負荷が大きくなるため、軽い金属屋根がおすすめです。
薄い屋根材を採用する場合は、雨音対策のために防振材を屋根下地に入れる方法もあります。
上階の足音が下に響きやすい
1階梁あらわし天井の上に2階がある場合は、上階の足音や物音が下に響く可能性があります。
梁あらわし天井の上にやむを得ず居室を配置する場合は、1階天井裏や梁上部に遮音材や吸音材を設置する方法もあります。
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天井裏(小屋裏)空間を活用できない
梁を見せる納まりにすると、天井裏(小屋裏)の空間がなくなるので、収納などに活用できません。
特に平屋建ての場合は収納するスペースが足りなくなる傾向があるため、注意が必要です。
梁の上に埃が溜まる
梁あらわしと吹き抜けを組み合わせる場合、生活しているうちにどうしても梁の上に埃が溜まってしまいます。
高い場所にある梁はうまく掃除ができず困っているという方もいるようです。
梁の下に脚立を置ける場所を確保したり、ロフトや2階ホールから掃除できるようにしたりしておくと便利です。
樹液やヤニの汚れが目立つ
無垢材の梁はもちろん、集成梁も樹種によっては徐々に樹液やヤニが滲み出る可能性があります。
特にマツは油分が多く、樹液・ヤニが出やすい樹種です。
汚れが心配な方は、無垢材の梁よりも樹液やヤニが出るリスクの低い集成梁がおすすめです。
照明計画に工夫が必要
梁あらわし天井に一般的なダウンライトを組み合わせると、梁が邪魔で光が拡散しない可能性があります。
また、梁あらわしと吹き抜けを組み合わせると、天井から床までの距離が遠くなって、天井に照明をつけても手元の照度を確保できません。
空間プランに併せてオーダーメイドできる間接照明や建築化照明もおすすめです。
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配線・配管が見える
2階建ての1階を梁あらわし天井にすると、プランによっては上階の設備配管や電気配線が見えてしまう可能性があります。
照明計画や上階のプランをじっくり検討し、配管・配線が見えないようにしましょう。
省令準耐火構造では木の梁をあらわしにできない
省令準耐火構造とは、独立行政法人住宅金融支援機構が定める構造種別の住宅で、基準をクリアすれば以下のメリットを得られます。
- 火災に強くなる
- 不動産に付加価値がつく
- 火災保険の保険料が割安になる(火災保険における構造級別が鉄骨造と同等のT構造になる)
木の梁をあらわしにすると、省令準耐火構造として認められないため注意しましょう。(参考:フラット35|省令準耐火構造の住宅とは)
(参考:フラット35|省令準耐火構造の住宅とは|機構の定める省令準耐火構造の仕様[木造軸組工法](2023年4月1日))

“梁あらわし”の成功事例
蓮見工務店は、これまで無垢材・集成梁を見せた多彩な“梁あらわし”の住宅を手がけてきた実績があります。
その中から事例抜粋し、写真とポイントを紹介します。
“梁あらわし”でコンパクト空間の圧迫感解消

こちらは、コンパクトな機能性の高いキッチンに梁あらわし天井を採用した事例です。
梁の高さ分天井を高くしたことで、圧迫感を解消することに成功しました。
2階までのダイナミックな吹き抜け

こちらは梁を見せることで2階までの広い吹き抜けを実現した事例です。
梁よりも高い部分には2面に高窓を設置し、開放的で自然光に包まれた明るいリビングに仕上げました。

十字に渡る梁の下端には、シーンに併せて照明の位置を動かせるライティングレール(ダクトレール)を設置しました。
無垢梁の曲線を生かした家

こちらは構造計画の美しさを表現した事例です。
緻密に組まれた梁と柱はインテリアデザインの主役と言っても過言ではありません。

部分的に有機的な曲線を持つ「曲がり梁」を採用した点もデザインのポイントです。
ダイナミックな丸太梁を取り入れた家

こちらはダイナミックな丸太の梁材を採用した事例です。
無垢フローリング材や板張り天井との組合せによって、ナチュラルで温かみのある内装デザインに仕上がりました。
“梁あらわし”で上下の空間が緩やかにつながる家

こちらは2階建ての住宅へ梁あらわし天井を採用した事例です。
平屋建て部分に屋根勾配を生かした勾配天井を採用し、2階へつながる吹き抜けと組み合わせました。

梁あらわしによって、上下階の空間が緩やかにつながります。
雑誌掲載事例も多数ありますので、デザイン・間取り・性能の全てにこだわったマイホームを新築したい方は、お気軽にご相談ください。

“梁あらわし”に関するよくある疑問・質問

最後に、多くのお客様からいただく梁あらわしに関する「よくある質問」を紹介します。
Q.「梁あらわしにすると耐震性は低くなる?」
基本的には、梁を見せることで耐震性が落ちる心配はありません。
なぜなら、天井はあくまでも“仕上げ”であり、建物荷重や地震力・台風力への抵抗力とは切り分けられるからです。
ただし、梁あらわしと吹き抜けや勾配天井を組み合わせる場合、水平構面(天井)と梁が分離されると耐震性能に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、梁あらわしと吹き抜けや勾配天井を組み合わせたプランをご希望の方は、施工実績と構造計画・耐震設計に関する知識が豊富な建築会社へ相談しましょう。
Q.「梁あらわしと化粧梁の違いは?」
化粧梁の定義は主に2つあります。
- 構造的には必要ない場所にあえて装飾のためにつける梁(見せ梁と呼ぶことも)
- きれいに見せるための節が少なく木目の美しい無垢の梁材
前者は梁あらわしと明確な違いがありますが、後者は梁あらわしと同意語と言えます。
そのため、化粧梁という表記を見かけたら、プランや素材の詳細まで確認しましょう。
Q.「準防火地域・防火地域でも梁あらわしにできる?」
防火地域に建てるほぼすべての建物と、準防火地域の2階建て以下(延床面積の上限あり)の小規模な建物以外は、原則として「耐火構造」か「準耐火構造」にする必要があります。
耐火構造や準耐火構造にするためには、火災による建物倒壊や周囲への延焼を防ぐため、主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段)を「一定の耐火性能のある材料」にしなくてはいけません。
「一定の耐火性能」とは、以下の時間で火災に耐えられる性能を指します。
主要構造部 | 耐火構造 | 準耐火構造 |
---|---|---|
耐力壁 | 1〜2時間 | 45分〜1時間 |
柱 | 1〜3時間 | 45分〜1時間 |
床 | 1〜2時間 | 45分〜1時間 |
梁 | 1〜3時間 | 45分〜1時間 |
屋根 | 30分 | 30分 |
階段 | 30分 | 30分 |
(参考:国土交通省|令和4年度建築基準法改正(防火関係)について)
梁あらわしで耐火構造・準耐火構造にする場合、国土交通大臣の認定を受けた不燃木材を用いたり、防火皮膜や燃えしろ設計を採用したりすることで実現できる可能性もあります。(参考:国土交通省|防火被覆の効果を考慮した燃えしろ設計法の合理化に資する検討)
※不燃木材:不燃薬剤を注入した木材
※防火皮膜:木質の構造部材を石膏ボードなど耐火性の高い材料を上張りする方法
※燃えしろ設計:強度を確保するために必要な柱・梁の断面寸法に、火災時に焼失するであろう厚みを追加して太い材料を用いる手法
まとめ

梁あらわし天井には、デザイン性や快適性の面でメリットがあります。
ただし、コストなどに関するデメリットや注意点もあるため、家のプランを検討する際には注意しましょう。
梁あらわしを取り入れた家を後悔しないためには、たくさんの事例を見てご自身のイメージと合うデザインを見つけることも重要です。
デザインと性能、快適さの全てを持ち合わせた家を埼玉県で新築・リノベーションしたい方は、梁あらわしを取り入れた住宅の事例が豊富な「蓮見工務店」にお任せください。
