街並みを眺めてみると、シンプルモダンな箱形の家が多く建ち並んでいます。特に、密集した住宅地では、シンプルな家が建てやすいからなのでしょう。一方、若いご夫婦の中にも、和風住宅での家づくりを計画する人が増えています。畳のある暮らし、階段のない暮らしで安全に子育てをしたい、自然素材に囲まれて暮らしたいというような希望があるのだと思います。
ただ、和風住宅での家づくりを計画する若いご家族の中には、洋風な家で育ち、和風住宅での暮らしを体験したことがない人もいらっしゃるのではないでしょうか?反対に、モダンな家を好む人の中には、実家の和風住宅が、寒くて暗かったので、洋風な家にしたいと考える人もいるでしょう。
確かに現在ほど断熱性能が高くなかった昭和から、平成の中頃にかけての住宅は、和風住宅に限らず、寒い家が多くありました。また、日当たりの良い部屋もあるが、陽射しが届かず、晴れた日の昼間でも暗い部屋がある、という間取りの和風住宅もあります。明るくて暖かい和風住宅にする為には、昔から続く日本の家の良さと、今の時代に、向上し続けている住宅性能という両方を備えた家づくり計画が必要です。
和風住宅の特徴を創り出すスペースや建具
和風住宅は暗いと連想される方もいらっしゃると思いますが、間取り次第で、明るい家を建てられます。和風住宅には、陽射しを家の奥まで届ける襖や欄間、陽射しを楽しめる縁側など、おひさまと仲良くできる要素がたくさんあります。
縁側
縁側は、部屋と庭を繋ぐ板張りのスペースです。冬でも、窓ガラスを通した陽射しが溢れ、洋風な家のインナーテラスやサンルームのように暖かく過ごせる場所です。冬には、部屋に侵入する冷気と、部屋から逃げていく暖かさを緩衝し、暖房に使われるエネルギー消費を抑える働きもします。
加えて広縁は、部屋と部屋を繋ぐ廊下でもあります。玄関から部屋まで、庭の景観が見られる縁側を通して、お客様をご案内できるので、格式の高さを演出できます。庭に面した引き戸と、部屋に面した引き戸をすべて解放すれば、庭の自然と癒合する部屋、季節ごとに変わる空気の匂いが感じられる部屋になります。
濡れ縁
住宅から外側に張り出したスペースです。住宅の外側にあるのですが、濡れ縁までは裸足で出られます。庭に出る際には、濡れ縁の下には沓脱石を置かれているので、サンダルや下駄が楽に履けて、より庭と家が繋がります。
玄関もそうなのですが、日本の住宅の大きな特徴は、家に上がる時には、必ず履き物を脱ぐということです。外部の汚れを家の中に持ち込まない玄関の造り方や、沓脱石と濡れ縁の組み合わせは、日本古来の宗教的な意味合いや、清潔を好む日本人の習性から生まれたのではないでしょうか?
襖
部屋と部屋の区切りや出入り口に使われる、組格子の両面に、紙や布を張った引き違いの引き戸です。大昔の日本の家では、通気性が優先されていた為、屏風や簾で部屋を区切っていましたが、平安時代の頃から、寒さを防ぐ為、柱と柱の間にはめ込む襖が使われるようになり、鎌倉時代には、現在のような引き違い戸になったそうです。
開き戸との違いは、開け放っておけることで、開ける度合いによって、採りこむ光と風の量を調整できます。襖を取り外せば、襖で区切られていた部屋と部屋を繋げ、大広間として使えるという良さもあります。
襖には、伝統的な手すき技法で作られた鳥の子紙や、織物と紙を貼り合わせた織物紙が使われます。それらの紙には、全体に模様のついているタイプや、風景や植物が描かれたタイプなどがあり、室内の雰囲気を様々に演出します。
欄間
天井と鴨居の間に設ける欄間には、陽射しと風を通す働きがあります。襖を閉め切っていても、欄間から、光や風が通りぬけ、明るさと換気の良さが得られます。彫刻を施した凝った仕様のランマや、櫛の歯のように竹を並べる欄間、障子やガラスを使った欄間などがあり、それぞれ室内の雰囲気をより良くします。
真壁
在来工法には2種類の壁の収め方があり、柱を見せる壁の納まりが真壁、柱の見えない壁の収まりが大壁です。塗り壁よりクロスが多用されるようになったことや、真壁は、大壁に比べて、施工の手間がかかることから、和室にも大壁が使われることが多くなってきました。しかし、漆喰の塗り壁と調和する、柱や梁の木の美しさが際立つ、和の雰囲気を醸し出すなど、真壁には和室を際立たせる良さがあります。真壁は大壁に比べて、大工の腕の見せ所でもあります。
軒
深い軒は、瓦屋根と並んで、和風住宅の外観の特徴の一つです。瓦屋根で、軒の深い家には、和風住宅の美しさがあります。近年は、軒の短い家が増えてきましたが、深い軒には、見た目の良さだけではなく、日射を遮蔽して夏の暑さを抑える働きと、紫外線や雨から外壁を守るという働きがあります。
軒をつける方角と深さは、季節ごとに変わる太陽の位置を計算して決められます。夏は強い陽射しを遮って、太陽の熱を家の中に採り入れず、冬は陽射しの暖かさを家の中に採り入れる為です。
和風住宅に使われる素材の特徴
和風住宅には、主に、瓦、畳、漆喰、木、和紙、織物などの自然素材が使われます。これらの素材に共通する性質は、調湿性です。快適な暮らしには、適切な室温と湿度が欠かせない要素ですが、調湿性は、この2つの要素に大きく影響します。
調湿性によって、室内が常に適切な湿度に維持されていることは、カビや結露を防ぐだけではなく、体感温度にもかかわりがあるからです。冬は寒く、空気が乾燥して湿度が低くなる季節ですが、湿度が低くなりすぎると、実際の室温より寒く感じます。
夏は、暑く湿度が高まりますが、湿度が高くなるほど、実際の室温より暑く感じます。夏に、畳に寝転がったり、裸足でフローリングの上を歩いたりしても、ペタペタしない理由も、自然素材が持つ調湿性によるものです。
寝転がったり、裸足で歩いたりしたときに、跳ね返るような硬さを感じないことも、自然素材の良さです。自然素材は、内部に空気を含んでいるので、タイルや複合フローリングのような硬さがなく、弾力性を持っています。その為、日常生活で発生する関節への負担が減ることに加え、ヨチヨチ歩きの子供が転んでしまっても、衝撃が緩和されます。
向上し続けている住宅性能を備える
地震の多い日本で、耐震性能が進化し続けていることは、当然のことなのですが、資源の少ない日本では、各家庭での省エネへの必要性も高く、1970年以降は、住宅の断熱化も進んできました。大地震が発生する度に法改正され続ける耐震基準や、技術者による住宅の耐震を高める為の研究と開発が進化し続けているのと同じように、断熱に対する基準や、技術者による住宅の断熱を高める為の研究と開発も、進化し続けています。
しかし、その急激な進歩によって、失敗した住宅も少なくありませんでした。1980年に、北海道で、多数の住宅に発生した新築住宅の床が腐り落ちてしまうという問題は、建材に自然素材ではなく、通気性のないビニールクロスなどを多用したことと、断熱と換気計画をセットで考えなかったことが主な原因でした。
世界の先進国に比べて、断熱性が格段に低いと言われ続けてきた日本の家づくりですが、近年は、研究、開発が進み、断熱性の高い家が増え、過去の失敗を基に、断熱性を高めれば高める分、通気性が伴わなくてはならないこともわかってきています。
本来、日本の家は、通気の良さを優先して造られてきていました。その良さを取り戻した上で、進化し続けている断熱性と気密性を採り入れ、暖かく、空気が停滞しない家、内部結露しない家を建てることが大切です。暖かく、空気が停滞しない家は、家族の健康を守り、結露しない家は、いつまでも快適に暮らせる終の棲家を実現します。
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和風の家は、心が落ち着く魅力があります。和風住宅の家づくりを計画される際には、本物の良さがある和風住宅を、たくさんご覧になってみてください。より、和風住宅の良さが感じられるようになり、家づくり計画に役立ちます。
蓮見工務店の家づくりへの想い
私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの
手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、
そして設計事務所として培ってきた
デザイン性、高性能な家を提供させていただきます。
「熱を集め、移し、蓄える」
「風を通し、涼を採り、熱を排出する」
「直接的な日射を避ける」 「断熱・気密性を高める」
などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、
今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。
快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、
全てのバランスで実現できます。
そして、経験豊富な職人の手によってカタチになるのです。
私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、
お客様の一棟に全力をそそいでまいります。
注文住宅やリフォーム、リノベーション、店舗などの建築を
ご検討中の方には、これまでに携わったお宅をご見学していただけます。
「木造住宅の視覚的な心地よさ、
木にしか出せない香り、温かみのある手触り」
「木の心地よさと併せて太陽の光などを取り入れた、
パッシブデザインの良さ」
を感じて頂けます。
ご希望などございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。