自然と共存して暮らしやすさを創る
日本の伝統的な住宅の考え方は、自然の恵みを採り入れ、自然の厳しさを抑え、自然と共存して暮らしやすい家を造っていくことが基本です。
庭との融合
日本の家の特徴の一つは、庭との融合です。庭に向かって設けられる大きな掃き出し窓は、草木や空の美しさなど、自然の景観を家の中に採りこみ、風通しの良さを生み出します。
居室と庭の間には縁側があります。広縁は室内側に造る縁側、濡れ縁は室外に造る縁側です。濡れ縁は、柵のないウッドデッキと同じように使われてきました。広縁は、冬の日中は暖かな温室のような空間になり、日が落ちてからは、外部との緩衝地帯になって、室内に入り込む冷気を和らげます。夏は、どちらの縁側も、軒によって家の中に侵入する強い陽射しを抑えます。
現代の生活においても、リビングと庭の間に縁側を設けると、リビングがより広く感じられます。また、濡れ縁と室内をフラットにつなげることで、リビングの延長として使えるので、アウトドアリビングとしての楽しさも生まれます。
陽射しとの付き合い方
太陽の熱は、冬は暖かさを、夏は暑さを届けます。日本の家はその変化に応じて、冬は暖かい陽射しを家の奥まで届け、夏は強い陽射しを遮る工夫がされています。その中で、最も重要な役割を果たすのは、季節によって変わる太陽の位置を計算して、設けられた深い軒や庇です。最近は、軒や庇のない家もありますが、深い軒のある家は伝統的な日本の家のスタイルです。軒や庇は、陽射しを遮るだけではなく、雨風から外壁を守る働きもするので、家の劣化を抑えます。
加えて、陽射しは家の中に明るさを届けます。その明るさは、季節によっては眩しさになることもあります。日本の家で使われてきた障子や簀戸は、明るさを採り入れつつ、プライバシーを守る、開き加減で陽射しの入り方や、庭の景観の見え方を調整するという便利な建具です。また軒先に設える簾も陽射しや視線を調整する機能が高く、盛夏に簾がつくる陰影はとても風情があります。
自然素材
畳や木、和紙などは、日本人にとって、懐かしさを感じる親しみやすい素材です。日本の住宅では、昔からそのような自然素材が使われてきました。屋根には瓦、内装には、漆喰の塗り壁や木材、床には畳や木材というように、家中が自然素材で造られていました。
これらの自然素材には、それぞれ特徴がありますが、共通して持っている特徴として、調湿性と通気性が挙げられます。高温多湿な日本において、快適に暮らし、家を長持ちさせるためには、空気中の水分が増え過ぎないこと、空気が通り抜けていくことが必要不可欠です。
加えて、瓦や木材、塗り壁は、適切な手入れを続ければ、とても長く使い続けられます。近年の日本には、安価な物を使って短いスパンで交換するという文化が定着してしまった感がありますが、ここ数年、多くの人が昔のように上質な物を使って、長く大事に使うということの大切さに気付き始めています。家づくりも同じです。伝統的な日本の家は、その風土に合った自然の素材を用い、大切に手入れをしながら長く住める家でした。これからの家はその良さに学ぶことが大切なのではないでしょうか?
また、瓦や漆喰、木材には、音を和らげるという働きもあります。屋根にあたる雨の音、生活音を和らげ、音による居心地の悪さが発生しません。そして、長い年月を経て、役割を果たした部材が解体撤去されるときも、自然素材の畳や和紙、土壁などは環境に負荷を加えることなく自然に帰りますし、和瓦や木材は姿を変えて再利用される、サスティナブルな素材といえます。
木材を活かした美しさ
伝統的な日本の家では、木の美しさが随所に活かされています。その美しさはモダンな雰囲気の中でも十分に引き出せます。
真壁 柱や梁などの構造材を見せる壁の造り方です。年月とともに、味わいのある風合いに変化していく楽しさがあります。吹き抜けと組み合わせると、よりダイナミックな空間が生まれます。
大黒柱 住宅を支える重要な役割を果たすと伴に、メリハリのある空間を生み出します。
木の建具 木で組まれた格子は、室内の引き戸やパーテーションとして使われます。光と風を通すので、家の中を明るく、風通し良くするとともに、格子の美しさが室内の雰囲気を向上させます。また、格子が使われた欄間もあります。建具は日常から手にするものなので、木製の手作りの建具で設えられた室内は高級感を醸し出します。
床 床や縁側は面積が広いので、木の質感や色合いによって、室内の雰囲気に大きな影響があります。天井、壁と調和した木材の床は、自然で落ち着いた雰囲気を作り出します。また、針葉樹系の杉や桧の床板には、弾力性があり熱も伝えにくいので、長時間立ち仕事をしていても疲れにくい、高齢者や小さな子供の関節への負担が少なく、下肢障害にも好影響をおよぼすという良さもあります。
軒天 軒の裏側にも木材が使われます。玄関先や縁側から、目に入りやすい場所なので、この部分に風合いの良い木材が使われていると、家の外観に高級感と落ち着きが生まれます。
和モダンな家に採り入れたい土間と引き戸
広い土間と引き戸は、現代の家では採用されないことも少なくありませんが、採り入れ方によっては、暮らしやすさに繋がります。
土間
伝統的な日本の住宅では、玄関は広い土間を備えていました。ちょっとした作業をしたり、家に上がるほどではない用事の来客を応対したりできるような広さです。近所付き合いが希薄となり、来客応対の機会が少なくなった現代の暮らし方では、最小限の面積の土間と、ホールを省略した間取りが増えていますが、広い玄関は、家に落ち着きを与えます。現代の家に広い土間を採り入れるとしたら、靴のまま立ち入れる収納スペースを設けることで、より使い勝手の良い玄関にできます。
玄関土間を広くとるという他に、玄関からキッチンまで続く土間を設けるという方法もあります。このような土間があると、勝手口を作らなくても、食糧品の運び入れたごみ出しが楽にできます。この場合、キッチンを土間にするという間取りもあります。土間キッチンは、野菜くずなどを落としても、きれいに洗い流せることと、調理中に火が出てしまっても燃え広がりにくいということを考えると、便利な面があります。その一方、木の床と違って、土間は硬い素材が使われることが多いので、疲れやすく、足元が冷えるという面もあります。この他に、玄関からリビングまでつなげる土間という間取りも、庭との親和性が高まり、蓄熱性の高い土間は、室温の上昇下降を緩やかにし、温熱環境の向上に寄与します。
引き戸
玄関の出入り口には、引き戸が使われていました。現在は、気密性に有利な玄関ドアが主流ですが、玄関引き戸には、前方にスペースをとらない、通行の幅が広がるなど、使い勝手の良さがあります。障子2枚が連動するタイプを選ぶと、通常の2枚建ての引き戸よりも、さらに通行の幅が広がります。通行の幅が広がると、車椅子を利用する家族がいても、通行しやすくなります。また、ベビーカーを押している場合には扉が邪魔にならない、介助者と共に通行する場合、扉を押さえている必要がないなどの便利さがあります。外部に面する玄関の建具は、気密性に配慮しながら使い勝手の良い引き戸を採用すると、様々な場面でその便利さを感じるのではないかと思います。
家の中の出入り口には、襖や障子が使われていました。取り外して並んでいる部屋を一部屋にする、開閉の幅で風と明るさの量を調整する、前方にスペースを開けておく必要がないなどの良さがあります。
和紙や木が使われているので、調湿や断熱などの機能性もあることに加えて、襖紙の伝統的な意匠と、障子の組子の繊細なデザインは、日本人の感性にしっくりとなじみます。
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和風な家に住んでみたいけれど、畳で正座という暮らしはできそうにない…とあきらめないでください。和風モダンな家なら、生活スタイルを変えずに、日本の伝統的な良さを採り入れた暮らしやすい家が実現します。
蓮見工務店の家づくりへの想い
私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの
手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、
そして設計事務所として培ってきた
デザイン性、高性能な家を提供させていただきます。
「熱を集め、移し、蓄える」
「風を通し、涼を採り、熱を排出する」
「直接的な日射を避ける」 「断熱・気密性を高める」
などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、
今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。
快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、
全てのバランスで実現できます。
そして、経験豊富な職人の手によってカタチになるのです。
私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、
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