在来工法の強み

木造軸組工法の和風住宅

木造住宅での家づくりを検討していらっしゃるご家族の中には、木造住宅の工法の選び方で迷われることがあるのではないでしょうか?木造住宅と一口に言っても、工法によって、間取りの自由度や、家づくりにかかる費用が変わります。どの工法にも、良い面と問題点があります。自分たちの家づくりの理想の実現に、最適な工法を選ぶことが大切です。

木造住宅に工法には、主に木造軸組工法、木造枠組壁工法、伝統構法、金物構法が挙げられます。この中で、国内で最も多く採用されている工法は在来工法、規格住宅で採用されることの多い工法は、木造枠組壁工法、最も古い工法は伝統構法、比較的新しい工法は金物構法です。

在来工法(木造軸組工法)

在来工法の木造住宅

大屋根と丸太架構の家

国内のほとんどの戸建て住宅は、在来工法と呼ばれることもある木造軸組工法で建てられています。柱と梁を組み合わせて骨組みを作り、筋交いや面材を用いた耐力壁で、地震や強風による横揺れを受けとめるという考え方の工法です。耐力壁を主に外壁に配置し、内部の間仕切壁をなるべく非耐力壁にする事で、間取りの自由度が高いプランが可能になります。大開口を設けることもできます。

間取りの自由度の高さは、可変性にも繋がります。家は長く住む場所ですから、家を建ててからの長い年月には、様々な暮らしの変化が訪れます。子供の誕生で家族構成は変わる、子供の成長に応じて暮らしやすい間取りが変わる、子供が独立していき使わない部屋が生じる、高齢になりバリアフリーな環境が必要になるなど、ライフステージの変化によって、暮らしやすい家の条件は変わってくるものです。

そのような時にも、在来工法の家は、柔軟に対応できる構法です。間仕切壁を増やしたり減らしたりすることで、居室を増やしたり、広げたりといった簡単なリフォームだけではなく、増築、減築なども行えます。結婚した子供の家族と一緒に住む二世帯住宅にすることもできれば、子供の独立後、こじんまりした家に減築することもできます。

最も普及している工法なので、使われる材料も豊富に流通しており、家づくりの予算に合わせて、建材を選ぶことができ、コストコントロールがしやすいという良さもあります。その為、伝統構法や、金物工法(SE構法)に比べると、家づくりの費用を抑えられます。

このように、良い面がたくさんある在来工法ですが、問題となり易い特徴もあります。在来工法と一口にくくられていますが、木造枠組壁工法のように、設計や、使用する建材に明確な規格があるわけではありません。在来工法で建てられた家でも、構造計算や温熱計算に基づいて設計された地震に強く、断熱性の高い優秀な住宅もあれば、確認申請でのいわゆる四号特例と呼ばれる制度による弊害で、安全で快適な性能を有していることを検証していない家もあるという現実が生まれています。また、設計力と大工の技術力に幅があることに加え、プランの自由度が高い分、完成した家にも違いが出やすい傾向があるとも言えます。

過去の大きな地震で、在来工法の家が倒壊した理由は、倒壊した住宅が、シロアリ被害などによって耐震性が低下していた、ということの他に、在来工法は設計力と、大工の技術によって、優劣の差が大きいということも挙げられます。建築基準法は、安全な住宅の為に定められている法律ですが、その基準に対して、強度をクリアしているか否かについては、審査機関側でのチェック項目外ですので、設計者に任されているのが現状です。

すまいの環境を良くする為には断熱性能を高める事がとても有効ですが、的確な換気計画や結露計算をしなかった場合、外壁や屋根の内部で結露が起こり、腐朽菌や白蟻の被害により、寿命の短い家になってしまうことさえあります。

このように在来工法には、様々な特徴があります。その結果、在来工法の家は、設計や施工の仕方によって、いつまでも快適に暮らせる優秀な住宅になったり、耐震基準や断熱基準をクリアしているかも覚束ない家にもなってしまいます。

木造枠組壁工法(ツーバイフォー工法)

木造の枠組材に、構造用合板などのパネルを張り、壁と床にする工法が木造枠組壁工法です。ツーバイフォーという呼び方の方が耳になじみがあるかもしれません。壁式の構造にすることで、住宅にかかる重さが壁全体に分散する為、木造軸組壁工法(在来工法)より耐震性を高くしやすいと言われています。また、気密も工法の性格上比較的取りやすく、火災発生時には火炎気流の回り込みを妨げるので、耐火性も高いという特徴があります。

ただし、パネル式の家には、間取りの自由度が制限される、というマイナス面もあります。壁(パネル)で住宅を支え、揺れを受けとめる構造なので、壁の位置を動かせないからです。在来工法の場合、外壁まで取り壊すという大掛かりなリフォームも、間仕切り壁を設けたり外したり、という小さなリフォームもできますが、木造枠組壁工法ではそれができません。したがって、間取りを変更したくなった時に、自由に変更できないという問題点があります。

木造枠組壁工法のもう一つの特徴は、国際規格材のパネルを使うということです。このパネルは、複雑な手順を省いて、施工できるように規格されているため、比較的に大工の熟練度に関係なく、均一の仕上がりが期待できます。したがって、施工者によって、住宅に優劣がつくというような問題が生じづらいと工法です。一定レベルの住宅を量産できるシステムとも言えますが、自由に、自分に合った特徴を表現したいというプランは不得意とも言えるかもしれません。

伝統構法

伝統工法による化粧小屋組

伝統工法による化粧小屋組

日本古来の工法ですが、一般の戸建て住宅がこの構法で造られることは、少なくなっています。柱と梁による軸組という点では、木造軸組み工法と同じなのですが、より大きな部材の木組架構で地震力をしなりながら受け止め、木組架構と緩やかに接合された土壁が壊されることで地震力を吸収して家を支えるという面が異なります。また、土台の造り方も異なります。

在来工法では、家全体にコンクリートの基礎を作り、その上に木材の土台を載せ、金物で緊結して、柱を建てます。一方、伝統構法では、地面に置いた石の上に柱を建てます。この方法は、在来工法の持つ地震の揺れを、耐力壁で受け止める耐震という考え方とは違い、地震の揺れを、各部で吸収したり、受け流したりする免震的な考え方です。大地震で住宅の倒壊をひき起こす原因の一つである、柱の引き抜きを避けられる造り方でもあります。

ただ、現在の建築基準法においての考え方の主流は耐震です。伝統構法の免震的な考え方は、その強度とコストのバランスにおいて一般住宅では限界があることや、定量的な免震効果が期待できない事など、課題が多く残されています。その為、伝統構法で個人の住宅を建てるケースは、それほど多くはありません。伝統構法の家は、日本の家の良さが集結した素晴らしい住宅ですが、現状では建材費が高額になってしまうという問題があります。

金物工法(SE構法)

阪神淡路大震災での大きな被害が開発のきっかけになった構法です。構造計算を基に作られる構造用集成材と、基礎に連結させる土台と柱、特殊な金物で高い耐震性を備えています。木造住宅でありながら、軸組を剛接合し最小限の耐力壁で構成する準ラーメン構造なので、間仕切壁の少ない自由な間取りができます。

また、全棟構造計算により安全性を確認しますので、吹き抜けやスキップフロア、ビルトインガレージなど、構造的に特殊なプランでも安心して採用することが出来ます。

ただ、金物工法(SE構法)には、建築費が高額になるという問題点があります。構法自体がまだ一般的ではないので、スケールメリットという面でも木造軸組工法や木造枠組壁工法に比べ不利になります。また使用材料が、木造とはいえ基本的に集成材なので、接着剤の使用量が多く、健康面での安全性と、経年での耐久性についてのエビデンスはまだ整っていない状況といえます。

在来工法の強み

モダンな外観デザインの在来工法の家

窓から緑を眺めて暮らせる家

在来工法の強みは、様々なプランやデザインの住宅に柔軟に対応できること、新築時にもリフォーム時にも間取りの自由度が高いこと、そしてコストコントロールがしやすい工法であることです。

構造部の造り方、地震への備え方に異なる部分はありますが、伝統工法の良い部分をうまく活かせるのも、在来工法の大きな魅力です。本来、日本の家が持っていた瓦屋根の美しさ、柱や梁を際立させる真壁の構造美、陽射しと風を調整する障子や縁側などを、現在の生活様式に合わせて採り入れることができます。洋風に仕上げることも和風に仕上げることもでき、画一的ではない家、家族の好みを反映した、唯一無二のプランやデザインを備えた家が完成します。

地震から住宅を守る耐震性や、1年を通して季節に応じた快適な室内環境を作る断熱性と、家族の暮らしにあった間取り、居心地の良い内装、家族の好みに合う外観、これらすべてを実現する為に、バランスよく予算を配分できること、家づくりにおいて、家の造り方と、予算面に融通が利くことが、在来工法の強みです。

手をかけて建てる家、自然素材を使った家、十分な陽射しと風を採り入れられる家、安全で快適な家にする住宅性能を備えた家…在来工法で、そんな家族の為の唯一無二の家を建てませんか?

蓮見工務店の家づくりへの想い

注文住宅,家づくり,設計

私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの
手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、
そして設計事務所として培ってきた
デザイン性、高性能な家を提供させていただきます。

「熱を集め、移し、蓄える」

「風を通し、涼を採り、熱を排出する」

「直接的な日射を避ける」 「断熱・気密性を高める」

などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、
今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。

快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、
全てのバランスで実現できます。

そして、経験豊富な職人の手によってカタチになるのです。
私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、
お客様の一棟に全力をそそいでまいります。

注文住宅やリフォーム、リノベーション、店舗などの建築を
ご検討中の方には、これまでに携わったお宅をご見学していただけます。

「木造住宅の視覚的な心地よさ、
木にしか出せない香り、温かみのある手触り」

「木の心地よさと併せて太陽の光などを取り入れた、
パッシブデザインの良さ」

を感じて頂けます。

ご希望などございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

監修者情報

蓮見幸男

蓮見幸男

住まいの知恵袋、家づくり問題解決仕事人

住宅に関するさまざまな事柄(耐震・温熱・耐久性など)を計算やシミュレーションにより可能な限り〝見える化"し、安心・快適な唯一無二の住まいをリーズナブルにお届けしたいと考えています。

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