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4つのZEH
比較的温暖な関東地方に適したZEHには、4種類の基準があります。埼玉県でZEHを目指す家づくりをする場合には、この4つのうちのどれかを選ぶことになります。
ZEH
「断熱」+「省エネ」による省エネルギー率:20%以上
「創エネ」(再生可能エネルギー)を含む省エネ率:100%以上
ZEH +(ゼッチ プラス)
「断熱」+「省エネ」による省エネルギー率:25%以上
「創エネ」(再生可能エネルギー)を含む省エネ率:100%以上
加えて、次の3つの項目のうち、一つを備えている必要があります。
高断熱
屋根、壁、床、開口部など、家の外側を包む部分の断熱性を、ZEH基準の住宅より高めた住宅であることが必要です。
HEMSを備える
HEMSとは、Home Energy Management Systemの略称です。エアコンや照明など家庭で使った電気量、太陽光発電などで造ったエネルギー量を日常的に、簡単に確認できること、家庭で使う電気製品のエネルギー使用量をまとめて最適化すること、という2つの目的を持つシステムです。
国の政策としては、2030年までに全世帯へHEMSを設置するという目標を掲げています。
再生可能エネルギーシステム
家庭で使うエネルギーと同量、またはそれ以上のエネルギーを創り出せる太陽光発電、エネファームなどを備えていることが必要です。
ZEH+R(ゼッチ・プラス・アール)
災害時の停電に備えた住宅です。
ZEH +の基準に加えて、次の3つの項目のうち、一つを備えている必要があります。
蓄電システム(4kWh以上)
電気を蓄えるシステムです。電力会社から購入した電気、太陽光発電などで創った電気のどちらも蓄えることができます。蓄電容量によって、電気が使える時間の長さが変わります。例えば、蓄電容量が1kWhの場合、100ワットのLED照明を使い続けられる時間は10時間ですが、蓄電容量が5kWhの場合、約50時間使い続けられます。
蓄電池システムではその蓄電池の定格出力をチェックしておくことも大切です。蓄電池を水槽に例えると、定格出力は蛇口にあたります。定格出力が大きければ、使用できる電気製品の数が増えます。
災害時に消費する電力は、24時間電気を使い続ける冷蔵庫の他に、エアコン、災害情報確認の為のテレビやPC、スマホの充電、照明や炊飯器などを併せて、最低でも4kWh以上と考えられます。4kWh以上の容量を備えていると、台風や地震で、電気の供給が止まってしまった場合でも、少なくとも1日は持ちこたえることができます。
自立制御電源を確保している太陽熱利用温水システム
太陽熱利用温水システムには、太陽熱を利用して、給湯をするタイプと、給湯と暖房をするタイプ、そして戸建て住宅等の小規模建築物にはあまり採用されませんが給湯と冷暖房をするタイプがあります。自立制御電源とは、停電中に、自立起動して発電ができる機能のことです。この機能がついていることが、要件を満たす太陽熱利用温水システムに必要な条件です。
太陽光発電との違いは、太陽光発電は太陽の光から電気エネルギーを創りますが、太陽熱利用温水システムでは、熱エネルギーを直接取り込みます。高効率給湯器エコジョーズと組み合わせて省エネ効果も上げます。
停電自立型燃料電池
停電中に、自立起動して発電ができるレジリエンス機能を備えている燃料電池です。燃料電池とは、発電しながらお湯をつくるエネファームのことです。
ZEH Oriented(ゼッチ オリエンテッド)
「断熱」+「省エネ」による省エネルギー率:20%以上
「創エネ」(再生可能エネルギー)を含む省エネ率:再生エネルギーを導入しなくてもいい
北側斜線制限の対象となる用途地域にあり、敷地面積が85㎡未満の土地に建てる、2階建て以上の家が対象です。都心部の住宅密集地では、太陽光発電によって、十分なエネルギーを創り出せない環境にあることが多い為、創エネの部分が緩和されます。
この他にZEHには、北海道などの寒冷地を対象とするNearly ZEHと、Nearly ZEH+があります。
ZEH基準を満たす条件を備えた家
家庭で使うエネルギーと、家庭で創り出すエネルギーが差し引き0になる、またはそれ以上にエネルギーを創れる住宅にする為に、主に3つの要素が必要です。
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- 省エネ…エネルギーの消費量が少ない家電製品や、給湯システムを使い、太陽光発電などで創ったエネルギーで、家庭の電気を賄えること、ヘムスで電力量が確認できること
- 創エネ…消費するエネルギーより多くのエネルギーを創り出せる設備、作ったエネルギーを蓄える設備を備えていること
- 断熱…屋根、壁、床、窓やドアなど、外気に触れる部分に、高い断熱性能が備わっていること
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ZEHには、光熱費が抑えられる、停電時の備えができる、資産価値が上がるなどの良さがありますが、毎日の生活の中で、最も実感できることは、夏は涼しく、冬は暖かい家の中の快適さです。
ZEHの暮らしやすさ
高断熱の家では、冷暖房をしなくても快適に過ごせる時期が長く、寒さや暑さの厳しい期間には、最小限の冷暖房で、快適な室温を維持できます。また、暖房をしている部屋と、していない部屋の温度差、暖房をつけている時間帯と止めている時間帯の温度差が抑えられるので、家族の健康を守りやすくなるという良さもあります。特に高齢者にとっては、ヒートショックのリスクを抑えることにも繋がります。
ただ、ZEHで求められている断熱性能は、いわゆる高断熱高気密住宅といわれるHEAT20のG2やG3グレードに比べると決して高いものではありません。ゼロエネルギーを効率よく実現し、なるべく設備に頼らないで快適な室内環境を実現するためには、ZEH基準よりも高い断熱性能をそなえることが大切になります。
ZEHの問題点
暮らし始めてからの光熱費が抑えられるとは言っても、新築時の建築費は、一般的な住宅に比べて嵩んでしまいます。ZEH基準を満たすために、様々な機器を導入しなくてはならないからです。また、導入した機器は、一生涯使い続けられるわけではありません。定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンス時には、費用が発生します。
太陽光発電パネルを最大限に搭載しようとすると、必然的に北側に向かって高くなる片流れの屋根形状になりがちです。法規的にはクリアしていたとしても北側の既存隣接住宅の日射条件は大きく悪化する可能性も高くなり、近隣トラブルの原因にもなりかねません。周辺環境も考慮に入れて計画することが求められます。
新築時に受けられる補助金と、暮らし始めてからのランニングコスト、設備機器の導入資金や、メンテナンス費用を考え併せて、導入を決める必要があります。