間取りプランを作る際には、家族の動線や、それぞれの部屋の広さなどを
基に考えていきますが、室内環境への配慮も非常に大切な要素です。
室内環境とは、温度、湿度、陽当たり、風通し、静かさ、
プライベート感などを表し、居心地の良さ、快適さに関わります。
室内環境に影響を及ぼす要素には、建材や空調設備なども挙げられますが、
陽当たりや風通し、外部からの視線や騒音には、
敷地の持つ条件や周辺の環境と、間取りが大きな影響を与えます。
また、高低差のある土地や変形地、道路との位置関係などによっても、
家の建て方が変わってきます。
そして、家の向きや形状によって、間取りの造り方は変わります。
快適な室内環境を作るためには、
土地の条件や、周辺の環境に合わせた間取りにしなくてはなりません。
敷地の持つ条件や周辺の環境と間取りの関係
敷地の持つ条件には、土地そのものが持つ条件と、敷地の周辺の環境による条件があります。
土地そのものが持つ条件とは、土地の形状や土壌の質です。
もともと持っている土地に、不利な条件下にあるというケースもありますが、
土地探しの段階で、「利便性や周辺環境の良さ」が同じ地域であるにもかかわらず、
他の土地より、低価格で購入できるという理由で、
高低差のある土地や、変形地を選ぶケースがあります。
道路との高低差がある、敷地内に高低差がある、
傾斜しているといった条件の土地が、高低差のある土地です。
旗竿地と言われる道路に面する幅が狭く、奥に土地が広がっている、
旗竿のような形状をした土地、平行四辺形や三角形の土地が、変形地です。
これらの土地は、整形地に比べ、陽当たりや風通しを確保することが難しく、設計の工夫が求められます。
ただ、施工を依頼する工務店といっしょに土地探しをしている場合、
変形地ならではの間取りを提案してもらえることもあります。
高低差を活かした優れた設計、変形を活かした間取りであれば、造成費や建築費は
嵩みますが、一般的な整形地に建つ家より、魅力的な家が生まれるケースもあります。
大きな窓を開けたまま入浴できる浴室や、ビルトインガレージなどが実現するかもしれません。
敷地の周辺の環境による条件とは、
高い建物が近くにある敷地と、2階建て以下の家に囲まれている敷地
それぞれの敷地が広い住宅が立ち並ぶ地域と、
住宅が密集している地域といった、周辺の環境の違いです。
2階建て以上の建物があったり、隣家との距離が近かったりすると、陽射しと風を遮られたり、
周辺からの生活音や、視線に煩わされる暮らしになってしまう恐れがあります。
そのような環境の土地に建てる家に、広い整形地に建つ家と同じような室内環境を確保するためには、
陽当たり、風通しの他に、外部からの騒音や視線を、家の中に入れない工夫も必要です。
では、具体的にどんな間取りが、陽当たりと風通しを良くするのでしょうか?
室内環境を良くする間取りと窓
空間の作り方によって、家の中に採りこめる陽射しと風の量は変わってきます。
空間が細かく区切られていればいるほど、陽射しと風の量は減り、
空間が広がれば広がるほど、陽当たりと風通しの良い家が生まれます。
吹き抜けのある間取り
空間を広げる手法の一つとして、吹き抜けを採り入れた間取りがあります。
吹き抜けは、階上の部屋と、階下の部屋の空間を繋げる間取りです。
天窓や、階上の部屋の窓からの陽射しが、階下の部屋にも届き、明るい空間が生まれます。
加えて、吹き抜けのある間取りは、窓に高低差を作りやすくなります。
風には、低い位置から高い位置に抜けていくという性質があります。
吹き抜けがあると、1階の窓から入った風が2階に抜けていくので、広い風の通り道ができます。
また、暖かい空気は上昇するという性質もあるので、夏は1階の熱が、2階の窓から排出されます。
ただし、その分、冬は、暖房の熱が2階に逃げてしまうことになるので、吹き抜けを作る場合には、
家全体の断熱性を高めておくことも、忘れてはならないポイントです。
吹き抜けは、窓との組み合わせも重要ですが、スケルトン階段とを組み合わせると、
蹴込板に光と風を妨げられないので、より陽当たりと風通しが良くなります。
窓の工夫
吹き抜けの良さを活かすためには、窓との組み合わせ方が重要ですが、
吹き抜けがない場合でも、窓の高低差はつけられます。
高窓や地窓を、腰高窓や掃き出し窓の対面に配置する
袖壁や、樹木、すべり出し窓を配置し、壁に沿って逃げていく風を家の中に採りこむ
などの方法で、風の通り道が作れます。
高窓は、陽射しが入ってくる時間を長くするので、採光量を増やせます。
隣家や道路からの視線が気になるような位置につける窓にも、視線を防げるので、高窓が適しています。
そして、窓には、景観の額縁という役割もあります。
敷地が広く、草木や樹木が美しい庭がある、公園に面しているなど、
窓からの景観を楽しめる場合には、大開口のある部屋が実現します。
しかし、隣家の窓と向かい合っている、道路に面しているというような状況であれば、
大開口からの景観は楽しめません。
反対に、視線が気になる居心地の悪い部屋になってしまうでしょう。
そのような場合には、高窓や天窓で、空の景色を切り取り、
室内に彩を添える、という窓の設置方法もあります。
また、窓は、窓が面している方向によっても、陽射しの入る時間帯、陽射しの質が変わってきます。
東に面している窓は、朝日の入る窓です。
早起きをする人には気持ち良い窓、
起床時間が遅い人にとっては、睡眠を妨げられてしまう窓でもあります。
西に面している窓は、午後から日差しが入ってくる窓です。
西からの陽射しは高度が低いため、庇や軒では遮れません。
西向きの窓には、遮熱ガラスやオーニングなどの遮光・遮熱対策が必要です。
南に面している窓は、夏は軒や庇で陽射しを遮る必要がありますが、
冬は暖かな陽射しを採り入れられます。
窓の前に落葉樹があると、夏は陽射しを遮り、冬は陽射しを十分に採りこめます。
北向きの窓は、どの時間帯にも、直射日光が入らない窓です。
ただし、天窓をつける場合には、他の面につける天窓に比べて、
夏場の室温の上昇率を抑えられるというメリットがあります。
このように、窓の位置、開閉方法、窓の面する方向によって、
陽当たりと風通し、景観が室内に与える影響が変わってきます。
その為、間取りプランを進める上で、窓の配置も重要なポイントです。
中庭のある間取り
陽射しと風をより多く取り込み、プライベート感を持たせる間取りには、中庭を作るという方法があります。
敷地の条件に合わせて、コの字型やロ型の形状の家にするのです。
中庭のある家は、どの部屋の窓からも、陽射しが採りこめます。
また、家中に風が通りぬけていく、換気の良い環境が作られます。
外部からの視線を気にせず、窓を開けられることも、大きな魅力です。
掃き出し窓のある部屋に、デッキを設置すると中庭に融合し、より中庭を楽しめます。
住宅地においては、せっかくリビングに繋がる広いウッドデッキを作ったものの、
近隣の視線が気になり、寛げないというようなケースもあります。
中庭なら、そのような心配をすることなく、庭の景色を楽しみながら、ウッドデッキで寛げます。
ただし、中庭を作る場合、家族の動線に配慮しないと、暮らしにくい家になってしまう恐れもあります。
家事動線の妨げにならないよう、部屋が配置されている、
中庭に降りなくても、中庭を通れるような通路を作っておく、などの工夫が必要です。
加えて、中庭を設置することによって、断熱性が低下してしまう可能性があります。
中庭によって、外気温の影響を受けやすくなってしまうからです。
その為、中庭を設ける場合には、壁の断熱性能や、断熱、遮熱の機能を備えた窓など、
中庭があっても、快適な室内環境を作れるだけの住宅性能が求められます。